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「水曜日」という英単語が一瞬思い出せずにぎょっとした。約一月ぶりに英語で話した、今日の午後のこと。予備校時代の再来のような暮らしをはじめて一月が経つ。一日の半分をドイツ語の教室で過ごし、残りのうち半分を机に向かって過ごすので、降ろうが照ろうが最早気にもならない。ドラちゃんとの会話もドイツ語に切り替えた。眼と耳に入るものすべての意味が、めまぐるしいスピードで、日に日にクリアになってゆく。街が、行き交う人が、急速に意味と主張をもってあらわれてくる。そろそろ夢もドイツ語でみたいところだけれど、疲労しすぎて夢もみない。
Jan 26, 2006
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予定をうらぎって、どうやらあたしの目指す先は、隣街ではなくドイツの南の端っこになりそうな情勢になってきたことを知ったのは、数日前。ドラちゃんの職場のある、ここ北の端っこと、あたしが行くかもしれない南の端っことでは、だいぶん遠距離婚になるだろう。「隣街なら、毎週末会えるから、別居婚でも大丈夫!」力強く言っていたドラちゃんの表情が、さみしさで陰るのを見たくなく、数日ひとりで考えた。あたしの将来に好案件のためドラちゃんをおいて南下するのか、諸々を妥協してドラちゃんのそばにいるために北にとどまるのか。ひとりでもやっぱり南下しようと心に決め、顔を見ないようにしてドラちゃんに告げてみたのは、今朝のこと。「あたし、南にいくかもしれない」。振り向いてドラちゃんは条件反射のように即答した。「あ、じゃ、僕も」。腰が抜けるほど驚いた。南北の端と端とでは同居の可能性があるわけがないと頭から決めてかかっていたあたし。とにかく「一緒にいること」を守ることが、まず頭に浮かぶドラちゃん。その南の街にはドラ勤務先の支社があるそうで、ふたりで南下しようじゃないかと、ドラちゃんは楽しそうに言う。ああこの人はこうやって、日本にもはるばるやってきたんだったと思い出してみれば、腰が抜けるほど驚く理由はなにもなく、あたしのなかの硬いものがほぐされてゆくのを感じる。働き始めたばかりのドラちゃんがそう簡単に転勤できるのかとか、北ドイツしか知らないあたしたちが南でやっていけるのかとか、そういえば南って昨日の天気予報ではマイナス12度になっていたとか、いつものように、無意味に心配事の螺旋階段を上っているあたしの隣に、南にいったらスキーができるぞと、いつものように、現実を味方につけてしまう楽観論を展開するドラちゃんが居る。あたしがどこにいこうとも、きっと。やわらかくあたたかなものに、くるまれる。
Jan 6, 2006
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これでもうあと一年は、クリスマス~年末年始をやらなくていいことに、心底ほっとしているのはこの世界であたしだけではないはずだと信じている。そしてあたしは愛すべき日常へ、鼻歌まじりに戻る。鼻歌まじりに机に向かい、鼻歌まじりにジムへゆく。10年来、あたしは日常にジムを欠かさない。ほぼ街中のジムをたずねたその後で、両腕に信頼感のおける筋肉を備えたオーナーと握手をし、契約を交わした。さて、ドイツのジムだ。どの人もなんだかお洒落だ-なぜスポーツのときはお洒落なのか?「合同自転車こぎ」のコース(日本では人気がなくコースが消えてゆくのをよく見た)がどのジムでもメインだ-さすが自転車乗りの国料金設定に失業者割引がある-ドイツの底力を感じるあたし、むっとする納税者ドラちゃん夕方5時でもジムは会社帰りの若年層で満員-日本じゃみることのない光景ダンス系のコースが少ない-ダンスは別口でやるものなのだろうか?カップルで仲良く来ている人が多い-日本じゃあたしとドラちゃんくらいだった噂の混浴サウナには、その昔北欧人の友人からはじめて耳にしたときに期待したほどの、違和感も興奮もおぼえなかったけれど、太腿内側筋肉を鍛える新しいマシンに挑戦し、満足して帰路につく。少しずつつくられてゆく、あたしのドイツでの日常。それにしても、青空をもうここ何日も見ていないと、とっぷり暮れた帰り道で思う。せめてもの自衛策に、オレンジ色のペディキュアを塗る。ジムのシャワーで水しぶきに散るだろう、おひさま色を思いながら。
Jan 5, 2006
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