私の人生論 (思考が運命になる)

私の人生論 (思考が運命になる)

2014年12月09日
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カテゴリ: 千の朝
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 平穏な時代にあつても難かしい。

 まして歴史の流れが、急湍にさしかゝり、非常な速力で方向を變へようとしてゐる時、流れる者流れを知らぬ。

 政治の制度や経済の組織、又あらゆる思想の価値の急變、それは却つて将來平和時の歴史家が、省て始めて驚嘆する態のものかも知れませぬ。

 さういふ時に、机上忽ち事變の尤もらしい解釋とか理論付けとかゞ出來上るから安心だといふ様な事で一體どうなるか。

 自然現象でも、ある新しい現象の観察には、従來の観察の装置では何の役にも立たぬ、全く新しく工夫した装置を使はなければ観察が出來ない、さういふ場合が出て來るのであります。

 だが歴史現象に関しては、困難はそれに止まりませぬ。

 新しい自然現象の観察に新しい観察装置の工夫は必要だが、大體、自然科学に於いては、従來の知識といふものを土臺として、これを頼りにして新しい知識を、その上に積み上げて行くといふ建前で間違ひはないのだが、歴史ではさうは参らぬ。

 従來の知識の上に新しい知識を築かうにも、築けぬ場合が來る、土臺が崩れて了つて役た立たぬ。



 つまり危機といふ人間臭い表現で呼ぶに相應しい時期が來るのである。

 僕等はこれを非常時と呼んでをります。

 政治家も軍人も漫才も,非常時といふ同じ言葉を使つてゐるわけですが、僕は文學者として文學者らしく非常時といふ言葉を解したい。

「歴史と文學」 小林秀雄 創元社





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最終更新日  2014年12月09日 06時01分19秒
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