私の人生論 (思考が運命になる)

私の人生論 (思考が運命になる)

2017年02月24日
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カテゴリ: 千の朝


 我々が現在のやうに日本語を読み書きすることが出来る
 といふことそれ自体が、
 この「無視の構造」に支へられてゐる。

 それが及ばした影響から言つても、
 またそれの根をなす事柄の深さから言つても、
 これは単なる「国語表記の諸問題」などといつた、
 少数の専門の人々にだけかかはりのある問題ではない。

 この「無視の構造」は、

 文化の性質を根本から規定してゐた」
 我々の祖先の言語経験の本質である。

 そして漢意とは、
 実はこのことに他ならないのである。

 先程も見た通り、
 漢意は単純な外国崇拝ではない。

 それを特徴づけてゐるのは、
 自分が知らず知らずの内に外国崇拝に陥つてゐる
 といふ事実に、頑として気付かうとしない、
 その盲目ぶりである。

 「我はからごゝろもたらずと思ひ、

 当然理(シカアルペキコトワリ)也と思ふ」と、
 これこそが漠意の本質的な構造であつた。

 これが、
 訓読と仮字を生み育てた「無視の構造」
 そのものであることは、


 先ほどの話をおし縮めれば、
 訓読も仮字も、
 つまりは「我は漢字(からのもじ)もちゐずと思ひ、
 これはからの字にあらず、
 ただ当然(あたりまへ)の字也と思ふ」
 ことによつて生まれた方法だ
 といふことになるのである。

 もつとも日本人の心を損ふものとして
 宣長の難じた漢意が、
 実は我々の文化を、
 その最大の危機から救つたものであつた
 といふのは、
 誠に皮肉なことである。

「からごころ」 長谷川三千子 中公文庫





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最終更新日  2017年02月24日 06時01分20秒
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