私の人生論 (思考が運命になる)

私の人生論 (思考が運命になる)

2017年04月03日
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カテゴリ: 千の朝


 「現実的」であり、
 憲法の前文にうたはれてゐるやうな「国際社会」は
 「幻想」にすぎない、
 と言つてしまふのは正確でない。

 われわれの「国際社会」が幻想ならば、
 彼等の「力の計算」もひとしく幻想である。

 彼等の見方も又、
 他者と他者とは対立し争ふものであるといふ、


 たしかなことは唯ひとつ、
 われわれは我々流の幻想をもち、
 彼等は彼等流の幻想を抱いてこの世にある、
 といふ事実である。

 そしてこの事実には、
 もはや目をつぶつてゐてはならない
 ――余りにも危険だからである。

 目をつぶることによつて
 自分自身であることを守る時代は終りつつある。

 目を開けて、
 自らを知り、

 いよいよ本格的に取り組むべき時が来てゐる。

 ここ十年程の「日本論」の流行は、
 そのことを漠然と
 人々が感じ始めてゐることの表はれである。

 けれども人々は、

 ちやうど、
 まだ積み木が積めないので
 それをただ投げたりしやぶつたりして遊んでゐる
 赤ん坊のやうにして「日本論」を扱つてゐる。

 われわれは一体何なのか?
 われわれがわれわれ自身であるためには
 いつたいどうしたらよいのか?
 ――さういふ素朴な疑問が
 本当に意味をもつたものになるためには、
 われわれはもう一度、
 「あの戦争」を振り返らなければならない。

 永い日本の歴史の中ではじめて、
 われわれがわれわれ自身であるために
 戦はねばならなかつた百年間。

 そして戦ふために
 益々われわれ自身ならざることを
 余儀なくされた百年間。

 その頂点であり終結であつた
 「あの戦争」を虚心坦懐に振り返らねばならない。

 そしてそれを正しく
 底の底から理解したときはじめて、
 われわれはあの<聖なる戦ひ>
 「大東亜戦争」を「否定」して、
 新しく歩み始めることができるのである。

「からごころ」 長谷川三千子 中公文庫





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最終更新日  2017年04月03日 07時12分06秒
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