私の人生論 (思考が運命になる)

私の人生論 (思考が運命になる)

2019年08月22日
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カテゴリ: 千の朝


 多かれ少なかれ一つの謎(なぞ)であった。

 彼らにとって、この国は、花と軍艦の国、
 壮烈な武勇と繊細な茶碗の国、
 新旧両世界の薄明のなかに奇妙な陰影が交錯する、
 風がわりな辺境の国である。

 最近まで、
 西洋が日本をまともに取りあげたことは、一度もなかった。

 それが、おかしなことに、

 成果をおさめた今日、それらの成果が、
 多くの西洋人の眼には、
 キリスト教世界にたいする脅威と映っているのである。

 ふしぎの国では、どんなことでもおこりうる。

 空想が未知のものを思いえがくとき、そこには誇張がつきものである。

 世界は、新生日本に、一方では猛烈な非難を、
 他方ではばかげた賞讃をあびせた。

 われわれは近代進歩の寵児となり、同時にまた、
 おそるべき異教の再生――黄禍そのものとなった。

 東洋は、西洋について学はねばならない。

 だが西洋は、


 厖大(ぼうたい)な情報網をもちながら、西洋には、
 いまだにわれわれについての誤解がどれだけ多いことか。

 思慮分別のない大衆は、人種的偏見と、
 十字軍以来の遣物である東洋にたいする漠然たる憎悪感に、
 今なお支配されている。


 われわれの志向の真の目標を認識してはいない。

 それには、われわれの課題がけっして単純なものではなく、
 したがって、われわれの態度も往々にして矛盾したものとなった、
 ということがあるかもしれない。

 さらに、東アジアの文明史が、
 西洋社会にとって依然として神秘の書であるという事実
 ――おそらくこのことが、
 われわれの現状と将来について外部の世界がいだいている、
 きわめて多様な見解をうんだのかもしかない。

 日本人はいち早く、西洋の科学と工業、立憲政体、
 巨大な戦争の遂行に必要な組織をとり入れた。

 われわれに共感をよせる人たちは、
 日本人のこうした能力に驚嘆してくれる。

 だが、彼らが忘れているのは、
 現在の地位を日本にもたらした原動力が、
 外来の方法をとり入れた能力におとらず、
 外国文明の教えを消化しえたその内的活力にある、
 という点である。

 民族にあっても、個人にあっても、
 真の進歩を可能にするのは、外的知識の蓄積ではなく、
 内なる自我の顕現なのである。

「日本の目覚め」 日本の名著 岡倉天心 中央公論社





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最終更新日  2019年08月22日 05時10分07秒
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