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2014.09.24
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小田内隆『異端者たちの中世ヨーロッパ』(日本放送出版協会,2010)

総合評価  ★★★★★

本書で主に取り上げられているのはグレゴリウス改革以降のカタリ派、ワルド派、フランチェスコ修道会聖霊派+べガン、という3つの異端。
アリウス派とかドナトゥス派とかの古代末期からグレゴリウス改革までの間の異端や、もっとのちのフス派などについてはほぼ取り上げられてはいません。

大雑把にいえば、カタリ派は二元論的異端という教義に関する異端だったのが、その後のワルド派では俗人が説教を行う権利を巡っての異端という教義と教会の権威・権限の問題が混在したような点を巡っての異端になり、それがフランチェスコ修道会聖霊派になると教会に対する不服従の異端(一旦認可した修道会則やその解釈を変更しそれに従わないから異端…)というように、グレゴリウス改革後に教会が世俗的な面での勢力を伸長していく過程で、同時に異端とされる範囲も拡大していき行き着くところは教会に対する反逆罪=異端、というような内容なのですが、非常に内容が濃く、興味深い部分が多々ありました。

実は著者については知らなかったのですが、いまのところ検索しても他に本は出していないようです。
一冊しか本を出していない人だけどその一冊が当たり、という人が稀にいるのですがこの本はそういう部類に入ると思うのですが、そういう本は近現代史に比べ西洋中世史に多くあるような気がします。個人的にはそれだけ西洋中世史の研究者のレベルが高くなかなか本を出せない、ということなのではないかと思っていたりします。


で、以下は個人的に印象に残った箇所のメモで括弧内は私のコメント

93頁あたりから
中世ヨーロッパの人々はカタリ派を「マニ教」ととらえたし、宗教史の概説などにはマニ教から直接かボゴミール派経由かの違いはあるがカタリ派がマニ教に連なるとするものがいまだにあるけど、マニ教が中世の二元論異端の起源であるという説はほぼ否定されている。


60頁あたり
カタリ派が「マニ教」呼ばわりされたのは異端に遭遇した聖職者が教父著作、特にアウグスティヌスの異端表とかを参照して分類・命名しようとしたから。
あらたに勢力を得つつあるよくわからない異端の恐怖に対し、過去に存在したけど克服された異端の名称を付けることで飼いならそうとする、一種の象徴的な防御装置。

(この2点は明確に書いてあるものを読んだ記憶がないので特に目新しかったです。個人的には説得力がある見解だと思います。)

(つづく)





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最終更新日  2014.09.24 12:38:44
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