音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年07月23日
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カテゴリ: ジャズ


A・B・C面という新しい聴き方もあり


 ソニー・クラークは1931年生まれのジャズ・ピアニスト。主にブルーノートで様々な吹込みを残したが、31歳の若さで亡くなった。本作は1958年の録音で、発売当初はさほど売れることもなく評価が低かったと言う。けれど、日本のジャズ喫茶で紹介され、日本では超有名になった「ハード・バップの名盤中の名盤」。

 というわけなので、今さら紹介する必要もないような有名盤なわけだけれど、なぜ日本で名盤とされるのか(そしてなぜアメリカではうけなかったのか)は気になるところ。その理由を考えてみたい。

 一つめは、ジャケットである。ジャケットが素晴らしいから名盤というのは、必ずしも成り立たない(とはいえ、ジャケットよければすべてよし、みたいなことを言う人もいないではないが)。個人的には表題曲(「クール・ストラッティン」)とジャケットのイメージがあまりにぴったりとシンクロしていた、ということではないかと思う。都会的で洗練されていて、メリハリが利いた演奏の中にもリラックス感がある…そんな演奏と、あの「美脚ジャケ」がうまくリンクして捉えられた。

 もう一つは、当り前ながら、演奏そのものの良さである。本作に参加したアート・ファーマー(tp)の言うように、クラークのピアノのよさは、「頑張ってスイングしている演奏ではなく、自然に流れていく」ことと、「強いブルース感覚」にある。同じような観点から、 『ソニーズ・クリブ』 も筆者のお気に入りである。けれど、クラーク自身の演奏もさることながら、ベースのポール・チェンバースの役割も大きいのではないかと思う。目立たないが、「自然に流れる」演奏をうまく演出しているのは実はチェンバースだったりするのではないか。

 このように、本盤のよさを考えていっても、ジャズ史的にどうこうとか、スタイルがどうこうとかいう話に向いていかない。このことがアメリカでは受けなかった理由ではないだろうか。逆に言えば、ハードバップの与えられたコンテクストの中での名盤性が強い作品だということになる。しかも、上で述べた「自然に流れる」クラークの演奏は、いわば微妙なフィーリングの問題であって、「革新的プレイ」などでは決してない。いわば「受け身」で音楽を受容する体制があった当時の日本の方が、素直にこの微妙な感性を受け入れることができたのだろうと想像する。

 ところで、この作品は、LP時代のA面(CDの1・2曲目)ばかりがよく聴かれる。B面(3・4曲目)の評価は芳しくない。こちらの原因は、ドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズではないかという気がしている。A面に比べ、B面はドラムが演奏全体をやや牽引しすぎているように聴こえる。




[収録曲]
1. Cool Struttin'
2. Blue Minor
3. Sippin' at Bells
4. Deep Night
5. Royal Flush*
6. Lover*
*ボーナス・トラック

Art Farmer (tp), Jackie McLean (as), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)









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Last updated  2016年02月18日 19時57分16秒
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