音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2020年02月08日
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80年代から90年代へ、貫禄が感じられ始めた作品


 メキシコのロック・バンド、EL TRI(エル・トリ)が1990年にリリースしたスタジオ・アルバム6作目が、この『ウナ・レジェンダ・ビバ・ジャマーダ・エル・トリ~生きた伝説(Una leyenda viva llamada El Tri)』という盤である。1984年のメジャー・デビューからそれなりの年月が経過し、ちょうどこの前後から“貫禄”のようなものも感じられるようになったと言えるように思う。

 とはいえ、音楽的には守りに入ったわけではなく、むしろ全体的にテンポがよく、前へ前へと押してくる感じが強い。1.「カサ・コミーダ・イ・スステント(家と食糧と生活費)」や5.「アルギエン・パラ・アマール(愛する人が必要)」、6.「メ・ボイ・ア・スイシダール(自殺してやる)」(この曲の表題の直訳するとこうなるが、今どきの世の中だと何かと問題になりそうなタイトル…)なんかがその典型例と言えそうである。

 歌詞の内容に目を向けると、相変わらず日常を歌ったものもあれば、社会的・風刺的なものも同時に目につく。上記1.もそうしたテーマだが、他にも4.「エル・デセンプレアード(失業者)」、10.「ヌエストラ・レアリダー(俺たちの現実)」といった表題のナンバーが並ぶ。そうした中でもとりわけ聴き逃がせないナンバーとしては、8.「ミジョネス・デ・ニーニョス(何百万人もの子どもたち)」。高級車に乗り札束に埋もれんばかりの政治家がのさばる一方で、行き場もなくその辺でチューイングガムを売り歩く子どもたちがいる現実をストレートに詞にしている。

 最終的に、抜きんでてこれが彼らの最高作という盤ではないかもしれない。けれども、この後1990年代を通してEL TRIが大きな成功を収めていったのは、この頃から余裕のあるパフォーマンスが見られ始めたあたりに原点があると言えるのかもしれないと思ったりする。


[収録曲]

1. Casa, comida y sustento
2. Viejas de vecindad
3. Otra garrapata más

5. Alguien para amar
6. Me voy a suicidar
7. Ríe
8. Millones de niños
9. Como una lombriz
10. Nuestra realidad

1990年リリース。




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Last updated  2020年02月08日 19時44分54秒
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