続く3曲目は、「マンション・オン・ザ・ヒル(Mansion on the Hill)」です。そのまま日本語に訳せば、“丘の上の邸宅”となるでしょうか。殺人や犯罪というテーマの最初の2曲に比べれば、一見して牧歌的なナンバーです。というのも、幼い頃ないしは少年時代の情景といったようなものが詞になっているからで、トウモロコシ畑で遊ぶ姉弟の姿などはそんな印象を与えます。けれども、実のところ、その情景というのは、工場務めをする労働者階級の人とその家族が見上げる丘の上の大きな家が主題になっているのです。つまり、この階層の人たちは、永遠にそこに住むことはなく、いつもその邸宅を見上げるだけ。だからこそ、曲の最後は、現在に時間が飛び、工場から帰宅する車の渋滞の列で、自分自身が“丘の上の家の上に”輝く美しい満月を見上げるという情景描写で締めくくっています。