さて、そんな「色気」とは対極にあるようなシュリーマンにワン・ホーン作品ができるのだろうか、という点が本作品の聴きどころである。毎度の話となるが、トランペットでワン・ホーンというのはとにかく大変なのだ。ブリブリ吹けばうるさいし、マッタリ吹けば退屈となる。だから、ラッパのワン・ホーンは選曲の良さで勝負するのだ。その点、この作品ではよく考えられている1曲目にアップテンポのブルースを持ってくるが、リハモされて小洒落た感じに仕上げてあるので、オープニングとしては心地よい。2曲目はデューク・ジョーダンの美しいバラードだ。でだしがストレイホーンの"Chelsea Bridge"に似た曲だが、こういった手垢のついていない曲を持ってきたところが巧い。3曲目はレコードのB面の名曲と呼びたくなるようなミディアムテンポの美味しいオリジナル曲だ。4曲目はホレス・パーランの"A Theme for Ahmad"という曲。ラテン・フレーヴァーでとにかく美しい曲だ。これもB面の名曲系だろう。本物のB面の1曲目はアルバムタイトルの"Now's The Time"となる。B面2曲目がシュリーマンの作曲したスタンダード風のバラード。ラストもシュリーマン作曲でミディアム・テンポ。絵に描いたようなB面ラスト曲だ。選曲面で言えば、B面系の渋かっこいい曲で固めたマニア好みの作りとなっている。こんな考え抜いた選曲をシュリーマンがしたとは到底思えないくらいの出来過ぎぶりなのである。