アオイネイロ

October 3, 2011
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カテゴリ: 小説
「此処は……?」
うっすらと目を開けて、真っ暗な闇に少し戸惑いながら呟いた。
「気が付いたか」
淡々とした抑揚のない声が降ってきて顔を上げると、目の前に人が立っている。
「その声は、疾風?」
「ああ」
問いかけに人影が頷いたと同時に、部屋に明りが灯った。
疾風が火のついたランタンを持っている。
「疾風、私は一体……」

両手は後ろで縛られ、足も拘束されている。
「は、疾風」
驚いて疾風に声をかけるが、疾風は黙ったままこちらを見て動こうとしない。
そしてつい、と動くと、そのまま部屋にある燭台に火を灯し始める。
「う……」
すぐ真横で声がして見ると、そこには同じように縛られている紅亜の姿。
よく見れば、千歳や天音、凜の姿もあった。
「ここは?」
起き上った紅亜は、半ば朦朧とした声で呟く。
全ての灯りを灯し終ると、疾風は無言のまま自身の持っていたランタンの火を消した。
「疾風? アンタ、何してるワケ?」

紅亜の問いに、疾風が抑揚のない声で淡々と答える。
「……此処は何処でしょうか? 何故、私達は此処へ?」
「貴様等が知る必要は無い」
蜻羅の問いかけに、疾風は蜻羅達を一瞥すると吐き捨てるようにそう言った。
「なっ!?」

驚く蜻羅と紅亜の横で、千歳が悲しそうな声でその名を呼んだ。
しかし疾風は答える事無く、無言のまま部屋を後にした。
ガシャンと、檻の閉まる音が部屋に響き渡る。
「っう………」
押し黙った部屋の中に、天音のうめき声がやけに響いた。
「天音、御無事ですか?」
「っ、蜻羅……疾風が、疾風が……っ!」
蜻羅の言葉に、天音は苦しそうに顔を歪めながら何度もそう言葉を零す。
よく見れば天音の体にはあちこちに傷があり、塞がり切っていない場所からは血がうっすらと滲んでいた。





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Last updated  October 3, 2011 10:01:12 PM
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