アオイネイロ

December 6, 2011
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カテゴリ: 小説
静かな夜だった。

その日の夜は本当に静かで、私がたてる物音と
パソコンから流れるジャズピアノ。それと
窓の外で静かに振り続ける雨の音
それが混ざり合って
延々とこの部屋に響いていた。

響いていたというより、私の耳に微かな心地良さと共に流れ込んでくる。
静かで、優しい夜だった。
花の形を模したランプが橙色の灯りをちらつかせ、


夜の雨、静かな部屋。お気に入りの音楽と、落ち着いた環境。

好条件の中、私はいつになく穏やかな心地で、上機嫌でいた。
温かなブランケットは新品で、机にはアールグレイとチョコレィト。

だからか、きっと少し浮かれていたのだろう。
いつもよりのんびりし過ぎてしまった
そして私は、後ろから入ってきたひとつの影に
全く気付かなかったのだ。



部屋に入ってすぐに、私は口元を覆った。
玄関まで嫌な臭いが届いてきている。
生臭いにおい、明りの一切灯らない家。


その先のひとつの部屋からぼんやりとした灯りが洩れていた。
音楽に興味は無いが、カフェでかかっていそうなものが流れていている。
そして、パソコンのキーボードを叩く微かな音も

そうっと足音を殺して私はその部屋へと向かう。
カチャリという音すら立てず、部屋のドアをそう……っと開いた。



ひしゃげて原型を留めない腕
切り口から溢れだす、どす黒い体液


その隣で
まるでこの部屋の住人のように

むっとする匂いの中

夢のように穏やかに
湯気の立つカップに口をつけ、手元に置かれたチョコレートをつまみ
パソコンから音楽を流し、そしてキーボードを叩く

ひとりの少女の姿が

あった。






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Last updated  December 6, 2011 07:46:48 PM
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