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alex99 @ Re:塩野七生『ギリシア人の物語』(46/52)(12/18) 塩野さんの文章が簡潔なのは ラテン語から…
Julia3835 @ Re[1]:塩野七生『ギリシア人の物語』(46/52)(12/18) alex99さん >明けましてお目出度う御座い…
alex99 @ Re:塩野七生『ギリシア人の物語』(46/52)(12/18) 明けましてお目出度う御座います 本年もよ…
Julia3835 @ Re[1]:中川毅『時を刻む湖』(41/52)(12/02) alex99さん、コメントありがとうございま…
alex99 @ Re:中川毅『時を刻む湖』(41/52)(12/02) ダーウィンが神を殺したと思います それだ…
2015.12.02
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カテゴリ: 読書
中川毅著
時を刻む湖 7万枚の地層に挑んだ科学者たち
岩波科学ライブラリー

この本を書店でパラパラと見たときに、
「三方湖(みかたこ)」という名前がまず目につきました。
福井県にある湖です。

この湖のすぐ近くには縄文時代の鳥浜(とりはま)貝塚があります。
鳥浜貝塚は、きわめて保存状態がよく、


「縄文のタイムカプセル」とも言われ、
私も発掘展で、きれいな漆塗りの櫛などを見ました。

漆は、もともとは接着剤として使われていたという説もあり、
かなり古くから利用されていたようです。
出土品とは思えない鮮やかな赤い色は、見る人を惹きつけます。

そして、この三方湖の湖底の堆積物を掘削して
過去の気候変動を復原するという
環境考古学の安田喜憲(よしのり)先生の本も読んだことがありました。

でも、本書の内容は、縄文時代でも三方湖でもありません。

三方湖はプロローグにすぎず、
水路でつながっている水月(すいげつ)湖のほうが舞台です。


発掘をして出土した遺物などが、どの時代のものかを
特定するために炭素14が使われます。
これは放射性同位体で、半減期が分かっているために
遺物に含まれる量を調べることでその年代を特定できるのです。

ところが、元々の炭素14の濃度が一定でないと

「元々あった量からどのくらい残存しているか」を計測するのですから
最初の濃度が大きく違っていたら、結果は正確にはなりませんよね。

ここに水月湖が登場します。

その湖底の堆積物を採掘し、そこに表れた縞模様を
一枚ずつ数えることで歴年代が決まり、
その中の化石から炭素14の年代も得られるわけです。

言葉で「一枚ずつ数える」と書くのは簡単ですが
実際は気の遠くなるような単調で地味な仕事です。

ほんとうにできるの?
誰しも思ってしまいます。
実際、縞模様がきちんと「一枚」と数えられないこともあります。

それ以前に、ボーリングの際の困難も続出しました。

引き上げるときに縞模様が崩れてしまうのです。
さらに湖では、何メートルものボーリングを一度で行うことは不可能です。
ですから深さを変えてボーリングをし、
さらに採取する試料は重複させなくてはいけません。

確実に重複させるためには場所も重要です。
近すぎず、遠すぎず・・・・・・。

様々な困難を乗り越えての結末には感動します。
科学者には、誠実で謙虚な姿勢がなにより大切だと実感しました。




プロローグ―――「福井の湖、考古学の標準時に」

1 奇跡の湖の発見
   最初は偶然だった/年縞研究の幕開け/掘れるだけ掘ってみよう/縞模
   様はなぜできる?/年縞が失われないために/埋まらない湖/これをど
   う使う?

2 とても長い時間を計る
   長い時間のはかり方/戦争の陰で/成り立たない前提/誤差をどう解消
   するか/樹木年輪の「壁」/ピンチヒッター/北川浩之の挑戦/長い戦
   い/もう一つの長い戦い/時間の統一/標準時をめぐるデッドヒート/
   水月湖の挫折

3 より精密な「標準時間」を求めて
   93年コアの限界/イギリスの決断/1ミリも取りこぼさない/年縞独特
   の難しさ/7万枚の縞を数える/新しい技術/英独間のホットライン/
   見えない年縞/1200枚の葉っぱを拾う/北川データの復活/越えら
   れなかった壁/最後の工夫/完成した年代目盛

4 世界中の時計を合わせる
   ポーラ・ライマーの挑戦/より厳密な定義/地質年代学の歩み/成果を
   論文にまとめる/革命記念日を水月湖のほとりで/ついに「標準時計」
   に!/歴史の教科書を書き換える?

エピローグ―――「数えるなんて簡単なこと」






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Last updated  2015.12.05 17:32:11
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Re:中川毅『時を刻む湖』(41/52)(12/02)  
alex99  さん
ダーウィンが神を殺したと思います
それだけに、【種の起源】を発売するには大きな勇気が必要だった
結局、同じような考え方をしている人間の存在を知って,競争心から決断した
そうして
化石と突然変異の発見が
創世記を作り話にしてしまった

(2015.12.12 05:55:58)

Re[1]:中川毅『時を刻む湖』(41/52)(12/02)  
Julia3835  さん
alex99さん、コメントありがとうございます。

>ダーウィンが神を殺したと思います
>それだけに、【種の起源】を発売するには大きな勇気が必要だった
>結局、同じような考え方をしている人間の存在を知って,競争心から決断した
>そうして
>化石と突然変異の発見が
>創世記を作り話にしてしまった

そうですね。
当時の思想なども出版の後押しをしたようですから
哲学や思想と科学の関係というのも興味深いです。

同じようなことが縄文時代の遺物についても言えます。

縄文時代の石鏃が、天神が用いて地上に落したものだと
信じられていた時代があったそうです。

考古学も科学的な証拠を積み上げていく時代ですね。
(2015.12.15 16:44:48)

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