読書日記blog

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2007.05.05
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カテゴリ: ノンフィクション


幻冬舎新書



法の下で厳格かつシステマチックに運用される裁判の中で、チラリと見える裁判官の個性的なメッセージを紹介。

裁判員制度のスタートが迫り、一般向けの裁判関連本が流行している。この本は、元司法浪人が書いたものであるので、趣味で裁判傍聴をしている単なるマニアの著作より、本質に迫っている気がした。ともあれ、一般の人にも裁判を面白いものとして興味を持たせるという意味で、この手の本はなかなか価値がある。

法律というものは非常に論理的に良くできているが、同時に温かみの欠落している。誤解を恐れずに言うと、無味乾燥で面白くない。一般の人にとって、合理的な現代の法治よりも、人情が介入する余地のある人治のほうが魅力的に思えることもある。もちろん、人治が多くの問題を抱えていることなど自明のことで、中国の実情がそれを如実に表している。とはいっても、一般の人が難解に見える専門的な法制度に不信感を抱き、大岡裁き的な単純でわかりやすい裁判に魅力を感じる気持ちもよくわかる。

そのような民心と司法のずれが問題となっている中で、この本は、機械的に思われるいまの裁判にも血が通っているということをアピールすることに成功した。裁判官達の人間としての声は、裁判への感情的な信頼感を誘うものである。自分と遠くはなれた無関係な世界と思っていた裁判が、本書を読んで、身近に感じられた人も多いかと思う。
政治学を学んでいない人でも、床屋政談でああだこうだと天下国家を論じるのは、普通の人にわかる言葉で政治問題を扱った書物やテレビが多数あるからだ。娯楽として政治を扱ったものも数多い。一方で、これまで司法の分野は、専ら専門用語で語られ、門外漢には理解不能な領域だった。近年の娯楽として裁判を見るという風潮は、近寄りがたかった司法の領域を身近なものに変えつつある。裁判員制度をめって、司法への不信と司法への参加に対する躊躇の間でゆれる国民に、これらの本が与えた影響は大きい。





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Last updated  2007.05.05 23:39:13
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