読書日記blog

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2007.05.09
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カテゴリ: 教養・実用


中公新書



自身も客家である著者が、客家について多角的に説明。

客家とは、中原を追われ華南や東南アジアに移住していった漢民族のエスニックグループのこと。客家人は漢民族中のエリートグループとのプライドと反骨精神を持ち、古くからの伝統を固持しながら、商業や学問の領域で活躍している。また、歴史上の反乱や革命の指導者の中に客家人が多い。李登輝やリー・クァン・ユーなど、アジア各地の指導者になっているものもおり、その活躍の舞台中国国内におさまらない。

李登輝も客家だということに興味を持ち、本書を読む。客家の歴史的生活スタイルは、日本人が憧れを抱いているような中国のイメージと近いようだ。言語も客家語が日本の漢字と近いとのこと。日本語の食べるは、中国の普通話では吃となるが、客家呉では食のままだという。そのほかにも、日本人が尊敬していた中国のイメージのもとと思しき風習もかなり残っているようだ。
もちろんどんな民族でも、自分自身のことは総じて美化して書きたがるものなので、すべてをそのまま信じるのはいけないかもしれない。また、客家が自信を持って説明していることのでも、日本人の感覚からは疑問に思うことも幾つかあった。しかし、それでもいまの中国全体のひどいイメージと比べると、ずいぶん立派に思えた。
日本人は、昔から中国に反発しつつも一定の敬意も持っていた。しかし、日清戦争以降は中国人を軽侮し、敗戦後は自虐的な贖罪意識を持ち始めた。最近は侮蔑と恐怖と敵意が入り混じっている気がする。確かに、中国は様々な面でレベルの低い国であるが、急成長もしており、何より日本の地位を脅かす存在である。しかし、中国の歴史を見る際には、いまの関係から来るバイアスを捨てて、冷静かつ客観的に評価していく必要があるだろう。
中国関係の本を読むたびに、中国は広大で複雑だという、諦めにも似た感想を持つ。「中国のユダヤ人」といわれる客家の総代で興味深い歴史も、中国の歴史のほんの側面にしか過ぎない。中国を読み取るために必要なのは、民族の絆か、一族の血縁か、秘密結社の契りか。共産党の時代といいつつも、イデオロギーとは異なる様々な関係によって結びついている。その一方で所詮は散砂のようにまとまりがなかったりもする。広大な地域で膨大な数の人々がエネルギッシュに欲望をぎらつかせて活動している中国。極東の島国に日本に住む一介の若造にすぎない者が、何冊かの本を読んだところで、把握できるような生易しいものではない。それでももっと知りたいと思わせる魅力と、知らなければ怖いという存在感を中国は持っている。





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Last updated  2012.04.16 07:49:49
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