書評日記  パペッティア通信

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Mar 17, 2005
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カテゴリ: 経済



なにより、功なり身をとげた学者・ジャーナリストなどが、「自分の業績をまとめてみました」感がぷんぷん漂ってくる、あのスタイルが嫌です。かといって岩波新書は、中堅どころの学者・ジャーナリストに、強烈な問題意識にしたがって、専門書チックに書かせると、決まって『ルポ 戦争協力拒否』みたいな代物になってしまう。なぜ中公新書のような重厚なデキバエにならないのか、不思議だ。

山家悠紀夫はケインズ派の経済学者。岩波は、決して「構造改革」派に新書を書かせない。だから、珍奇な議論はない。手堅い大御所がかく。まとめてくれるのは、そりゃありがたい。安心だ。でも、新味がない。

好不況の定義。景気の波はなぜ生まれるのか。キチン、ジュグラー、クズネッツ、コンドラチェフ、各波の解説。景気動向指数の解説。戦後日本の経済史と景気循環のおさらい。景気政策は、金融政策から財政政策へ。そして、1997~98年を画期とする、日本経済の構造変化に説きおよんでゆく。

1997年橋本「財政構造改革」不況を境に、就業者数と賃金が減少を続ける日本。構造改革派のお題目、「財政政策は景気回復に効かない」「構造の悪さが不況の原因である」「不良債権が景気を悪くする」といった、蒙昧きわまる議論は、逐一批判されています。構造改革は、大企業と中小企業、中央と地方の収益格差をもたらし、景気を悪化させたこと。構造改革は、企業収益から家計所得への波及という、景気の自律的拡張のメカニズムを壊し、政府と未来への「信頼の破壊」をもたらしたこと。とくに、不良債権処理がすすめられた「にもかかわらず」、景気が回復しているという見方をしなければならないことを提唱。決して、銀行は、優良投資先へのリスクをとれないのではなく、優良な投資先がなかったのだ、と批判されます。

企業部門の収益改善は、家計部門に波及しないかぎり意味をなさない。景気は良くなっても、世帯間格差は広がり、雇用が増えず、賃金が減少し、労働強化では意味がない。なんとジニ係数は、米英につぐ0.322。かのポール・ボネの国フランスやドイツの0.28~0.25などより悪い。そこで、悲観的な「景気を回復させても、暮らしはよくならない」という絶望的な見方が提示されてしまいます。う~ん、痴漢でつかまった植草一秀以外、ほとんどいないケインズ派エコノミストに、「暮らし」の死亡宣告をされるとは…先は暗いのか、日本経済。

しかしなんですかねえ。
ケインズ派(財政出動派)の観点から、構造改革の批判ばかりなされるけど、もうひとつの道、インフレターゲット=デフレ期待反転派(金融政策派)に「まったく」触れられていないのは、いかがなものでしょう。まあ、一応経済学的にみれば「正しい」わけですから、批判しようがないのも事実ですが。ほぼ完全に無視されているという状況は、本当の経済政策の対立軸がどのへんにあるのか、すきまからうかがうには格好の書物になっております。

評価 ★★☆










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Last updated  Jul 20, 2005 03:16:48 PM
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