ヴェネツィアの獅子たち

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Reiko Fujiwara Marini

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カテゴリ: 人物伝


 14世紀初頭から、ヨーロッパの人口は増加していきますが、食物生産量はそれに伴わず、穀物の価格上昇をまねきます。貧富の差がさらに著しくなり、各地で、貧困層による、暴動や蜂起が頻発しました。それにペスト(黒死病)の蔓延が追い打ちをかけ、大きな社会的不安が広がっていました。
 人間の意志だけではどうにも出来ない、未曾有の疫病や天災を前にした時、いつの時代も、人々が頼りたくなるのが宗教というものです。
 それらの人々の、せめてもの心の平安に一役買うべき教会は、機能不全どころか、背景にある社会不安を利用する形で、堕落、腐敗していたのです。聖職者による賄賂はあたりまえ、窃盗や殺人などの重犯罪も珍しいことではありませんでした。
 全ヨーロッパの教会を統括すべきローマ法王も、権力の座を手にした後は極端な縁者贔屓の人事で、法王の一族が主要なポストを独占し潤う、愛人や子供を設けるのも普通のことになっていました。

 そういった時代背景に登場したのが、マルティン・ルター(1483-1546)に代表される宗教改革運動です。プロテスタント誕生の機となったルターの、ローマ法王庁への批判のポイントはいくつもあったのですが、とりわけ徹底的に非難されたのが、サンピエトロ寺院建設費用確保のための、免罪符の大量発行でした。

 ローマ教会は、「天国」という場所への予約席を取り扱う、特約代理店と化していました。教会に寄進をするという「善行」を行うことによって、過去の罪が償われ、大小の罪悪感は一掃され、天国行きのビザがもらえる(購入できる)のですから、人々は喜んで寄付や財産の贈与という「善行」を積みました。

 「地獄の沙汰も金しだい」とはまさにこのことですが、お客は満足、代理店は大繁盛でこんないい商売はありません。オーバーブッキングやクレームとも無縁です。「ビザ」をもって出発した人は、二度と戻っては来ないからです。
(その4に続く 写真はローマ、サンピエトロ寺院)






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Last updated  2008/06/06 10:00:05 PM
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