ヴェネツィアの獅子たち

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Reiko Fujiwara Marini

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カテゴリ: 歴 史


 日本では、塩野七生さんが『海の都の物語-ヴェネツィア共和国の一千年』を書いておられ、その取材力の広さと洞察力の深さだけでなく、読み物として素晴しく面白いこの本は、以前のヴェネツィア人の真骨頂と、かつてのこの街の空気を生き生きと伝えてくれます。

 この街に、アルヴィーゼ・ゾルジという歴史家がいます。総督も輩出しているヴェネツィアの古い家系の末裔で、現在のヴェネツィア文化、歴史の重鎮ですが、氏の著書『街、共和国、帝国 ヴェネツィア697-1797』の前書きに、こう書かれてあります。

 「いつの日か近い将来、恨みや先入観から解き放たれた新しい歴史家たちが、情熱と鋭い見識をもって、否定され中傷されて来たヴェネツィアの歴史を、きちんと検証する時が来るだろう」と。

 しかし、この大きな権威の潮流が変わる気配はないし、まず何よりも、今のヴェネツィア人である、この街の地元住人の多くが、自分たちの歴史について関心がないからです。 
 有名なこの街の出身である事や、名の知れた建築や芸術についての、ネームヴァリューゆえのプライドはあっても、自分たちの祖先が、何故どのようにして繁栄していったのかについて知りたいと欲するような、深く内なる誇りが見受けられないからです。

 なので私は、「そんな日」(いつかヴェネツィアの歴史がきちんと検証される日)は、とりわけイタリア人の手によっては、持たらされはしないと、悲観しています。





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Last updated  2008/11/08 04:11:37 PM
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