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第1話は こちら
用事があってかけて来たのなら、またかけ直してくるだろう。もし、も
う二度とかかって来なかったら? どんな理由にしろ、修二と知り合い
になれるチャンスかも知れないのに。
いろんな思いが交錯するが、どう考えても修二が自分に関わる理由
が分からない。ただ交差点ですれ違っただけなのに。ドッキリカメラか
何かで傷つくことになるくらいなら、いっそのこと関わらない方がいい。
そんな自虐的な考えに、自分でも半ば呆れながら携帯をテーブルの
上に戻した。
その日はなかなか寝付けず、夜中の2時まで悶々としていたが、修二
からの二度目の電話はなかった。強がりを言いながら、本当は心のどこ
かで修二からの電話を待っている自分が恨めしい。
翌日も、その翌日も、そのまた翌日も、修二から電話はかかって来な
かった。他の人からの電話やメールで携帯が鳴るたびドキッとし、発信者
を確認するたびガッカリしている自分が滑稽だ。あの日、すぐにかけ直せ
ばよかった。今更、修二に電話をかけてみたところで、私のことなんか修
二はもう覚えていないだろう......。
この三日間、もしや入浴中に修二から電話がかかって来てはいけないと、
脱衣所に携帯を持ち込んでいた。入浴時間が短く済むよう湯船には浸から
ず、シャワーで済ませるようにもしていた。けれど、その必要はなさそうだ。
久しぶりに湯船に浸かり、体を横たえる。四日前の出来事が、随分前の
出来事のように頭の中で再生される。もう何度巻き戻して見た映像だろうか?
その時、部屋に置いていた携帯が鳴り始めた。反射的に湯船から立ち上
がり、バスタオルを体に巻きつけ、部屋まで猛ダッシュする。今度は間に
合ってと心の中で祈りながら、テーブルの上の携帯を鷲掴みにし、応答ボタ
ンを押した。
「もしもし! もしもし!」
誰からの電話か確認もせず、息を切らし慌てて答える。
「あ、もしもし。森田さんの携帯じゃないですか?」
やさしそうな、それでいて男っぽい低い声。この声は、やっぱり修二だ。間
違いない。美優の声に驚いたのか、修二は少し戸惑っている様子だ。
「はい。森田です。森田美優です」
アワワと泡を吹かんばかりの自分を落ち着かせようと、少し声を抑えて答
えた。
「あ、三宅です。分かる?」
「分かります。分かります」
「どうしたの? 何かあった?」
「今、お風呂に入ってて」
「ああ、そうなんだ。今、話しても大丈夫?」
安心したようにクスッと笑う修二。
「今、お風呂から出てきたところなので、かけ直してもいいですか? 5分
程したらかけ直しますから。絶対、かけ直しますから」
修二の好意的な声に少し心が和んだ美優は、力強く念押しした。
「いいよ。じゃ、待ってるから」
笑いながら電話を切る修二。
電話を切った後、いつもの美優にはあり得ない素早さで身支度を整える。
ハァー、ハァー、ハァーと三度深呼吸してから携帯の発信ボタンを押した。
携帯のディスプレイに一つ一つ修二の番号が表示されていく。
プ、プ、プ。携帯の接続音。
心臓がドキドキして携帯を持つ手が少し震える。こんなに緊張したのは、い
つ以来だろうか?
「もしもし」
冷静な声で答える修二。
「あ、も、森田です」
「うん」
「さっき、かけ直すって約束したから」
「うん」
「あの」
「うん」
うんしか言わない修二。少し困惑し沈黙していると、クスクスと修二の
笑い声が聞こえた。
「よかったら、今から会えない?」
「え?」
「都合、悪い?」
「う、ううん。悪くない......です」
慌てて答える。
「家、どこ?」
「大阪市の東区」
「正確な住所言って。ナビに登録するから」
「東区xxx2丁目1-2-306」
「OK。多分30分くらいで着くと思うから。着いたら電話するよ」
修二と会うことになってしまった! しかも、修二が家まで来ると言う。
修二が来る? なぜ? なんのために? 電話番号どころか、住所ま
で教えてしまって良かったのだろうか?
第5話へ つづく
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太陽の光に包まれて最終話 October 23, 2006
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太陽の光に包まれて第14話 October 21, 2006