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2013.05.16
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テーマ: コラム紹介(119)
カテゴリ: コラム紹介
【朝日新聞 天声人語】
20130516


自分のことを大切に思う。自分自身に価値を見いだす。そんな心の動きを自尊感情という。多少なりともそれを持てないと生きづらいが、往々「自分はダメだ」と落ち込むのもまた人間である。

といったことを考えたのは、最近ヘイトスピーチ(憎悪表現)が議論の的になっているからだ。人種や国籍で人を差別し、侮蔑し、貶(おとし)める。例えば「韓国人を殺せ」などと、どぎつい言葉を発しながら在日韓国・朝鮮人の多い街中を練り歩く。

あまりのエスカレートに国会の論戦でも取り上げられた。谷垣法相は「品格ある国家、成熟した社会」という方向と正反対だと嘆いた。安倍首相も言った。彼らは「結果として自分たちを辱めている」。

仲間うちと違う属性を持つ人たちを攻撃し、その尊厳を傷つけることで優越感を持つ。満足を覚える。それは彼らの自尊感情の歪(ゆが)みのなせる業か。それともそれを持てないが故に代償を求めているのか。

司馬遼太郎の短いエッセーに「常人の国」がある。わが母校、わが社、わが民族……。「わが」と限定されると〈人間の情念はにわかに揮発性のガスを帯びる〉。ガスの素(もと)になるのは自己愛である。〈人はそれを共有して吸うとき、甘美になる〉。

ヘイトスピーチをたしなめる首相も、歴史認識をめぐる問題ではこの気体を吸い込んでいないだろうか。本当の誇り、自尊の心は、過去を謙虚に直視するところから生まれるだろう。常人の国であるためには「勇気と英知」がいると司馬は書いている。
(5月12日付)

~~~~~~~~

コラムの内容は別にして、文中の司馬さんについて付け加えます。
ご参考まで♪

「日本人は、常人の国である。それが、私どもの誇りでもある。
常人の国は、つねづね非・常人の思想とどうつきあうかを、愛としたたかさをもって考えておかねばならない。」

『常人の国』で、司馬さんはこうしめくくっています。
※「常人の国」は司馬遼太郎氏の『風塵抄』にあり。

加えて、『風塵抄』の中で、司馬さんは『平和』というエッセイで、平和をこう定義づけています。

「平和とは、まことにはかない概念である。
単に戦争の対語にすぎず、戦争のない状態、をさすだけのこと。」


その上で平和を守るためにどうすればいいか、それを説くのです。

「平和を維持するためには、人脂のべとつくような手練手管が要る。
平和維持にはしばしば犯罪まがいのおどしや、商人が利をおうような懸命の奔走も要る。
さらには複雑な方法や計算を積みかさねるために、好悪の評判までとりかねないものである。」


我々は、まず(最初に)平和についてよくよく考え、その上で(次に)我々が今何をすべきか、真剣に考えたいと思った次第です。
概念や空論を語っても、何も解決はしない。

「人脂のべとつくような」現実に即した実のある議論を期待したいものです。

蛇足であるが、『風塵抄』は司馬氏が古巣 産経新聞に長く綴られたエッセーである。

20130124aisatsu





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最終更新日  2013.05.16 06:26:50
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