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2023.01.22
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カテゴリ: 読書案内
【モクモクれん/光が死んだ夏】



本年も吟遊映人ブログをよろしくお願い申し上げます。

新年最初の記事は何にしようかと考えていたところ、こちらの筆頭管理人がそのヒントとなるものをいくつか提示してくれました。
中でも私の目を釘付けにしたのは、雑誌『ダ・ヴィンチ』の〝今月の絶対はずさない!プラチナ本〟というコーナーで扱っている読書案内です。
(残念ながら、この記事を扱ったものが何月号かは不明です。参照として取り上げるのに詳細不足で大変恐縮です)
そこで取り上げられた『光が死んだ夏』。
今回はこの作品について少しだけ語らせていただこうと思います。

作者であるモクモクれんは、この『光が死んだ夏』で商業誌デビューを果たしたとのこと。
しかも最初はTwitterに投稿したマンガがバズったことから漫画家への道に進んだらしい。

昔は少し絵の上手な子がせっせと『りぼん』とか『なかよし』にマンガを投稿して少女マンガ家を夢見ていたものなのに。
(たいていは撃沈だったけれど・・・)
余談はこれぐらいにして、『光が死んだ夏』のストーリーは次のとおり。

高校生のよしきは、親友のヒカルと一緒にいると、いつも違和感を抱いた。
正確に言うなら、ヒカルが山で行方不明になり、半年経ってひょっこり帰って来てからのようすが、ヒカルであってヒカルではないように思えるのだ。
よしきは思い切ってヒカルに言ってしまう。
「お前やっぱ光ちゃうやろ」と。
ヒカルは核心を突かれて驚くが、否定はしなかった。
みるみるうちにヒカルの表情はこの世のものとは思えないグロテスクなものに変化し、大好きなよしきに抱きついて、「お願い・・・誰にも言わんといて」とお願いする。
よしきはもともと内気でネクラだが、ヒカルとはなぜか一緒にいて心地良かった。
見た目は光と同じでも、光ではないナニカと一緒にいることに少しだけ抵抗はあるものの、受け入れてしまう。


ホラーマンガ家と言えば、私の世代では、楳図かずおや水木しげるだろうか。
特徴としては、とにかく読者を怖がらせることに重きを置いているせいか、グロテスクだしおどろおどろしい。
容赦ないと言っても過言ではない。
それでも水木しげるは、〝環境破壊〟とか〝恐れるべきは人間であり、妖怪ではない〟という社会的なテーマが感じられ、怖がらせるだけの読みモノには完結していない。

一方、『光が死んだ夏』でデビューを果たしたモクモクれんはどうだろう?

青春ストーリーでもあるし、ある種のBL的雰囲気も漂っているし・・・
ただ一つだけ言えるのは、人間の苦悩を描くことがマンガという世界観で見事に成功しているということ。
友情と言うにはあまりにも執着心が強く、重くヒリヒリするような感情。
2人の少年の間に流れる底なしの川は、一体どこに向かって流れているのだろうか?
読者はドキドキハラハラしながら続巻を待ち望むしかない。

年の初めにホラーマンガの紹介だなんて、と思っているあなた、騙されたと思って読んで欲しい。
昭和生まれの私たちが経験したことのない、鮮やかでエキセントリックな、それでいて令和のニュースタイルに仕上げられた完成度に度肝を抜く作品なのです。

                (了)

『光が死んだ夏』モクモクれん・著 



コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)は コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )は コチラ から


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最終更新日  2023.01.22 08:00:11
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