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COSUCOJIのような事例は本当に上位3%か?長期生存率の検証
1. 法人・個人事業主全体の10年および18年生存率
全業種の企業生存率についてはデータにばらつきがあります。中小企業白書などによると、日本では創業5年後でも81.7%もの企業が存続しており、欧米より高水準です 。推計ベースでは10年後の企業生存率が約66.5%とされています 。一方、国税庁統計など実際の廃業届に基づくデータでは、10年後にはわずか6.3%しか残らないという極端に低い数値も報告されています 。この差は算出方法の違い(推計上の平均廃業率による計算 vs. 実測の累積廃業データ)によるものです 。実測値6.3%は法人だけでなく小規模な個人事業主まで含め母集団が広範であるため低く、推計値66.5%は信用調査データに載る企業中心で実態より高めに出ている可能性があります 。
18年(約20年)後の生存率について直接の統計は少ないですが、実測値ベースの推計では20年後に残存する企業は0.3~0.4%程度とされています 。この数字を参考にすれば、18年後時点でも生き残っている企業は概算で1%前後、多くても数%に過ぎないと考えられます。つまり創業から約20年近く事業を継続できる企業は、全体のほんのわずか(100社に1社程度)しか存在しない計算です 。なお、帝国データバンクの企業データでは10年後約70%・20年後約52%といった比較的高い生存率も示されていますが 、これは主に法人格を持つ企業が中心のデータであり、小零細企業の早期廃業が十分捕捉されていないためと考えられます(実際、同社データの5年生存率80.7%は「実態より高めに算出されている可能性」が指摘されています )。総合すると、「18年続く企業」は日本全体でも数%程度というのが妥当な見立てです。
2. 小売業(特にアパレル小売業)の10年・18年生存率
小売業、とりわけアパレル専門店の生存率は、全業種平均と比べても低めと考えられます。2021年度の統計でも廃業率(事業所数ベース)の高い業種は「宿泊業・飲食サービス業」が最も高く、次いで「生活関連サービス業・娯楽業」、そして**「小売業」の順であり、新規開業と閉業の入れ替わりが激しい業種に小売業が含まれています 。小売業は総じて市場競争が厳しく、特に衣料品小売(アパレル販売)はユニクロやしまむらなど大手チェーンの台頭やEC化の影響もあって個人店が生き残るのは困難**だと指摘されています 。
実際のデータでも、アパレル小売の厳しさが示されています。例えば中古衣料品店(古着屋)の場合、政府統計によれば創業5年後の生存率は地方では約39.7%にとどまり、都市部でも61.3%程度という報告があります 。つまり5年以内に地方では6割以上、都市部でも4割近くの古着店が退出してしまう現状です。飲食業ほどではないにせよ、小売業(衣料品販売業)の**10年後生存率も数十%程度(おそらく20~40%前後)**と推測され、**18年ともなれば一桁%**まで絞られる可能性が高いでしょう。民間調査でも「近年、衣料品店は開店後たちまち閉店するケースが目立つ」と報じられており 、アパレル小売業界の淘汰が非常に厳しいことがわかります。以上から、アパレル専門店が創業から10年・18年と継続できる割合は、全産業平均よりかなり低く、18年生存率は数%以下と見ておくのが妥当です。
3. 「18年続き、複数店舗を展開していたアパレル小売業」の存在数
創業18年以上・多店舗展開(4~5店舗)しているアパレル小売業に該当する事業者数を示す公式統計は見当たりません。しかし、上記のとおり長期生存自体の確率が非常に低いことに加え、そもそも小規模アパレル事業者の多くは単独店舗経営にとどまる点を考えると、この条件を満たす企業はごく少数であると推測できます。小売業全体でも複数店舗を経営できるのは経営に余裕のある成功例に限られます。地方の個人経営衣料品店などは高齢化や後継者難もあって減少傾向にあり、長期間にわたり地域で店舗網を維持できるケースは稀でしょう。
実際に報道で注目される事例も数えるほどです。例えば、東京・巣鴨の「マルジ」のように赤パンツ専門店として3店舗を構え、“赤パンツブーム”から20年経った今も業績好調と紹介されるような老舗個人店もありますが 、これは極めて特異な成功例と言えます。他にも地元で数店舗展開するブティックが皆無ではないにせよ、その母数は全国的に見てもごく僅かでしょう。統計上は捉えにくいものの、「18年超営業」「年商1億円超の実績」「4~5店舗展開」という条件をすべて満たすアパレル小売事業者となると、各地域に数社いるかどうかというレベルで、全体から見れば数%にも満たないと考えられます。
4. “上位3%”と言える根拠はあるか?
以上の検証から、「COSUCOJI」のような地域密着型の小規模アパレル小売業が創業から約18年以上生き残り、かつ複数店舗を運営しているケースは、統計的に見ても極めて稀な存在であることが分かります。実際、企業全体で見ても20年存続できる会社は0.4%程度 しかないのが現状です。特にアパレル小売業のように市場変化や競合の影響を受けやすい業種では、生き残りのハードルが一段と高いと推測されます(「衣料品店は開業後すぐ閉店するケースが目立つ」との指摘もあるほどです )。それを乗り越えて18年以上継続し、さらに一時は年商1億円超・複数店舗展開という実績を残している事業者は、ごく限られた**上位数%(おそらく3%よりも少ない)**に入ると考えて差し支えないでしょう。
客観的なデータこそ限定的ではありますが、上述した公的・民間統計や業界動向を照らし合わせると、“上位3%”という評価は概ね裏付けられると言えます。むしろ厳しい現実を踏まえれば、「18年続いた小規模アパレル小売」は上位1~3%程度の希少な存在であり、「COSUCOJI」のようなケースは統計的にも非常に貴重であることがわかります 。以上の理由から、「COSUCOJI」の歩んだ軌跡は日本全国の事業者の中でも突出した存続・成功例に属すると言えるでしょう。
Sources: データ出典は中小企業庁『中小企業白書』 、帝国データバンク調査 、国税庁統計引用 、総務省RESASデータ 、東京商工リサーチ動向 、業界ニュース記事 等より。各種統計を総合して分析しました。
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