Playmate theta

June 4, 2006
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カテゴリ: 超短編
岩井祥子にとって、大学に入学したらテニスのサークルに入るというのは些細な目標のうちの一つだった。しかし、実際に大学に入学してみたらテニスサークルの多いこと。テニスサークルだけで7つはあった。どうも聞いたところによると、この新歓の時期だけ活動してるインチキテニスサークルもあるらしい。そういう所はただ遊んだり飲んだりするだけらしい。祥子としては、テニスサークルにはいって仲間と飲んだりテニス以外にも遊んだりするのも目的の1つではあるけど、それだけしかないサークルには入りたくなかった。結局それで3つに絞った。3つの新歓に顔を出してサークルの人を見て決めようと考えたのだ。

そのうちの1つのサークルの新歓で、彼女は一人の男に目をつけた。彼も新入生で自己紹介では佐々木何とか、と言っていた。残念な事に席も離れていて、彼は1次会で帰ってしまったので話をする機会はなかったが彼は背も高く、顔立ちもひときわ目立っていた。勝手な思いこみかも知れないけど何度か目が合った気もした。そして祥子はこのサークルに決めた。

それからサークルに入ってテニスをしてると2,3回彼と顔を合わせた。テニスも初心者だったと言っていたのにたった1週間程度でかなり上達していた。話も上手い、女性に対する当たりも柔らかい。しかし、祥子も自分で言うのもはばかられるが結構モテる方だ。今も彼氏が複数いる。それでも別に悪いとは思っていない。彼らはそれに全く気づかないほどに現状に満足している。誰も損も悪い思いも受けてないのだから良いではないか、と言うのが彼女流である。彼女は、佐々木に対して純粋に付き合いたいと言う思いと、あんな遊んでそうな男を落としてみたいという思いで悩んだ。どっちも付き合うことを目標にしてるなら別にどっちかで迷う必要はないではないか、と思うかもしれないが、それは違う。彼女にしたらそれはプロセスが全く違うのだ。戦略も全く変わってくる。この戦略性こそ恋愛の醍醐味だと彼女は常々思っているし、今までの所、戦略的に彼女を上回った相手はいなかった。

そんな、まだ方向性がめきれなかった時に佐々木と一緒に帰る事になった。今考えてもどうやってあんなに自然に私と一緒に帰るという方向に持って行けたのか思い出せない程に極めて自然な流れだった。そしてこともあろうか彼は付き合ってくれと言い出したのだ。

驚いたのと、嬉しいのと、先手を取られた悔しさとで祥子は混乱してしまった。後から思うと即決でokしてもよかったのに、その時は全く言葉が出なかった。彼も気を使って、返事はいつでも良い、と言ってさっさと先に帰ってしまった。

翌日から彼はサークルには顔を出さなくなってしまった。祥子は彼の電話もメールのアドレスも知らない。普段ならここで諦めるが、今回は獲物も一流で、しかも先に一撃を受けている。祥子はやっと方針を決めていた。本気で純粋に付き合う、でもまず、持てる全ての技と頭脳で彼を落とす。そう決めた。

まずこのバカ広い大学で、彼を見つけなければ。





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Last updated  June 4, 2006 12:17:58 PM
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ぷりたん@ 超ラッキー!(* ̄ー ̄) 今まで風イ谷に金出してた俺って超バカスww…
鳥蘭丸@ うにゅぅぅぅぅ…… 可愛がってもらうだけ可愛がってもらって…
桜井心 @ Re:断髪(09/23) とりあえずお久しぶりです☆ あははっ、…
theta @ Re:難しい子ですね(09/05) ☆真雪☆さん >私はこういう女の子独特な…
☆真雪☆ @ 難しい子ですね 私はこういう女の子独特な性格?は持ち合…

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