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輝く春の海。走る子供たち。そして急に暗闇ㇸ。けれど波の音。
ナレーション「宴の後 それでも波は寄せ波は返す。やがて一筋の光が砂浜の一点を照らし出す」
赤坂の繁華街の夕焼け。
走っている神崎昌也は二十代後半。後ろを振り返っている。くたびれたレインコートがはためく。人並みをかきわけながら昌也を追っていく一人の男。道行く人も立ち止まって振り向く。
雑居ビルの階段を降りてくる米原紗喜。 入って来る昌也と出ようとしていた紗喜とぶつかる。慌てて紗喜を物陰に連れ込んで強引にキスをする。ストップモーション。目を見開く紗喜。
繁華街で昌也を追ってきた男がうろうろしている。雑居ビルで紗喜と抱き合っている昌也の背中がガラスの向こうにちらっと見えているが走り去って行く男。
繁華街をレインコートを羽織った昌也と紗喜が歩いている。紗喜の肩を抱き寄せた昌也に「ヒューヒュー」という声がした。地下鉄赤坂駅の矢印が見える。
「悪かったな。付き合わせて」
と言いながら紗喜の顔をのぞき込んで昌也。「まだ子供だな」
「子供じゃありません」
「キスは目をつぶってするもんだ」
紗喜は口をとがらせる。昌也は車道に数歩出て手を上げる。タクシーが近づく。ポケットからしわくちゃの札を何枚か出した昌也は紗喜に握らせる。昌也の前で止まるタクシー。紗喜を突き放してタクシーに乗る昌也。 タクシーのドアが閉まる。
「こんなお金いただけません」
窓ガラスを叩く紗喜。
「いい女になれよ」
「お名前は?」
にやっと笑って手を上げる昌也。タクシーが発車する。遠ざかるテールランプ。いつまでも見送る紗喜。
