・小林賢太郎『表現を仕事にするということ』は、芸人、舞台作家、演出家として異彩を放ってきた著者が、自身のキャリアと仕事観を綴った一冊だ。演劇やコントという一見ニッチな世界で培われた哲学を、ビジネスの文脈でどう生かすか――それが本書の本質である。
・著者は「表現を仕事にする」とは何かを、徹底的に掘り下げる。創作の現場における意思決定、自己管理、モチベーション維持、そして“好き”をビジネスに変換する際の葛藤を、実体験を軸に語る。構成は大きく三つの軸で展開される。
1. アイデアの源泉をどう保つか 日常の観察からアイデアを抽出し、形にするまでの過程をシンプルな言葉で解き明かす。即興性と構造化のバランスをどう取るかという問題は、クリエイティブだけでなくビジネス戦略そのものにも通じる。
2. プロとしての自己統制 表現者は “ 感性の人 ” と思われがちだが、著者は徹底して自分を管理し、仕組みで創作を回してきた。習慣化の重要性や、感情に依存しない持続可能な働き方のヒントが示される。
3. 表現と市場の接続点 芸術とビジネスの間で揺れる視点が、赤裸々に語られる。「やりたいこと」と「求められること」のギャップをどう折り合うか、その問いは多くのビジネスパーソンが直面するものだ。
・本書は、芸術書でも自己啓発書でもない。むしろ、表現を生業とするために必要な戦略と実務を、シンプルな言葉で提示した「ビジネスとしてのクリエイティブ論」だ。 30
〜 40
代でキャリアの踊り場に差し掛かり、「自分らしさ」をどう事業や仕事に組み込むかを考える層には、極めて示唆に富む内容といえる。小林は語る ――
「表現を仕事にする」とは、才能を武器にすることではなく、日常を設計し続けることである。この視点は、芸術家だけでなく、あらゆるビジネスパーソンに通じる普遍的な原則である。
表現を仕事にするということ [ 小林 賢太郎 ]
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