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<当ブログは、極上生徒会とARIAを全力で応援しています>
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僕はいたって普通である。そう思っている。
小さい頃から、頭が良い訳でもなく、悪いわけでもなく『普通』。褒められたことではないが。
ニュートンがリンゴの落下から、地球に引力と言う力があるということを発見したという、常識程度なら深くもなく浅くもない程度に理解しているつもりだ。
ニュートンの人生が、どんなもので、どういうドラマを兼ね備えていたなんていうのは、物理学者かマニアが持っていればいい知識だと思う。
運動神経に関しても、可もなく不可もなくといった感じである。
通信簿には、評価が3という数字が見事なまでに並んでいる。
変わっているといえば、現在16歳だが約30回の転校経験があることだ。
年に約2回以上というハイペースで、国内や海外を転々としていた。父は、国際企業の社員と言うこれまた普通な理由だった。
父の転勤のたびに、住む場所を、国を変えた。中国の時は出てくる食べ物に恐怖を覚え、アメリカでは二軒隣で夫婦喧嘩のもつれから、銃撃戦が始まって危うく巻き込まれそうになり、一番やばかったのがアフリカにいた時だ。昼間に、町の町内放送で『ライオンに追われたヌーの大群が向かってきます』とか何とか言われて、スワヒリ語なんて分らなかった僕は危うくヌーに轢き殺される所だった。
色んな国に住んでみると、やはりここ日本がいいと思った。父も歳をとり、転勤はもう終わりにしたいと日本で定年を迎えることにしたようだ。
そんな理由で、あっさりと日本に帰ってきた。まだ、学生である僕は当然高校に編入した。
今日が、転入初日。
外国の高校とは違い、指定の制服があり統一感があって、学校が近づくにつれ同じ姿の人間ばかりになる。なんとなく面白い。
校門には、守衛ではなく体育教師が待ち構えている辺りも日本らしい。
見慣れない風景に、見慣れない顔、少し緊張しながら、校門を通り昇降口に入り、編入するクラスの下駄箱の位置を探す。
僕が転校生と気づいたのか、数人の生徒が物珍しそうに目線を向けるのが分る。
転校生は、「頭がいい」「カッコいい」などと『良からぬ』イジメージが先行する役。
普通すぎる僕では、言うまでもなく役不足である。
申し訳ないような、複雑な恥ずかしさを隠しながら職員室へと急いだ。
「失礼します!佐門先生はいらっしゃいますか?」
ノックをして、職員室に入った。佐門先生は、クラスの担任である。
「おはよう。君が、山田裄哉(やまだゆきなり)君だね。それじゃ、案内するから付いて来なさい。」
地の底から響くような、大ボスの様な低い声に大柄な体格に丸メガネ、彼が担任になる佐門大悟朗先生である。見た目どおりでいくと、野球部の顧問の様だが、実際は柔道部の先生である。
職員室は、第1校舎の1階にあり2階から上が教室となっている。第2校舎は、中庭を挟んで向こうである。第2校舎には、1年生の校舎と実習室があるそうだ。
僕が編入する2年生の教室は、第1校舎の3階で2-1。階段を上って、3階のフロアの直ぐ左端に見えたのが2-1だった。
しかし、転校に慣れているとはいえ、新しい学校の新しいクラスに入るというのはいつになっても緊張する。
あの、何ともいえない威圧感というか、転校生に良からぬ期待をかけて待っているクラスメイト達、同学年の生徒達の視線が突き刺さってくる感じ。あれには、どうしても慣れられない。
「私が先に入って、皆を座らせたら、君を呼ぶから外で待ってなさい。」
教室の前に来ると、佐門先生は大きな体をユサユサと動かしながら教室に入っていった。相撲取りというよりは、『ゴリラ』と思ってしまったことは内緒にしておこう。教室から聞えていたざわめきが止み、机がと椅子が動く音が聞え静かになった。僕の緊張がさらに増す。
「さ、入りたまえ」
佐門先生の呼ぶ声がした。僕の心臓の鼓動はさらに早くなり、体もガチガチになってきた。教室に入ると、以外と好感触なのか「おっ!」「普通だよ」などと、嬉しいとは言えないが悪くはない感じがした。控えめなブーイングがないだけマシだ。
「じゃ、自己紹介なんかをしてもらおうかな」
「あ、はい。名前は、山田裄成・・・」
やっぱり、日本の学校は普通だ。日本語が溢れた教室。監視カメラもない。若干茶髪に見えるような奴はいるが、黒髪で奇抜な髪型な奴は・・・あふっ!
「・・・・あ、アフリカにもいました」
落ち着け、気のせいだ。緊張しすぎて、幻覚が見えているに違いない。もう一度、ゆっくりと見てみるんだ。
・・・ま、窓際に神々しく光を浴びたアフロヘアーの眼鏡男子がいる!!!!明らかに、浮いている。就職説明会に、タキシードを着て来ている様な。前の席の生徒の頭の3倍はあるかという「マリモ頭」怪しく光る眼鏡からこちらを見つめる鋭い眼光。『普通じゃない』
これが、変人との出逢いだった。
「よ、よろしくお願いします・・・。」
▼
「いい・・・・」
なんだ・・・この声は・・・。ものすごく気持ちが悪い。
「実にいい・・・・」
何かにとり付かれたかのような重い感じ・・・。
息遣いが分りそうなくらい気持ち悪い。
「ヒジョーにいい・・・」
「って、何してんだお前は!!」
授業の合間に、机にひれ伏して寝ていると背後に嫌な気配がしたため、振り向いてみると『アフ男(アフロ男)』<先ほど命名>
アフ男が、俺の後ろを右へ左へと動いていた。気がつくと同時に、思わず右手による裏拳を綺麗に決めてしまった。ボーナスポイントが出そうなくらい、自分でも見事だった。
アフ男は、ブリッチをするように反り返り倒れまいと堪えているようだが、またその姿が気持ち悪い。
足がぷるぷると震え、腕をグルグル回しながら上体を起こし始めたが、足が限界だったようで、上体が80度くらいに上がった辺りで、足の踏ん張りが抜け見事にすっ転んだ。滑った弾みで、足は90度以上上がり、後頭部を強打した。まさに、コントのような光景だった。
「プッ!」
思わず、吹き出してしまった。しかし、こうなったことに『一応』責任を感じた僕は、近くにいた男子とアフ男を保健室に運んだ。幸いにも、気絶しているだけで、頭には大きなたんこぶができたくらいですんだ様だ。
それに、見事なアフロがクッションになったようだ。助けられたなアフ男。
逆に、裏拳の方がダメージが大きそうだ。倒れた後、鼻血を吹き出していた。
「とりあえず、心配はないわね。気がつくまではベットに寝かせておくのが無難ね。」
「そうですか、よかった。」
保健医の先生の言葉で、一安心した。編入初日に、殺人罪で捕まり世間を騒がせるつもりはない。
「・・・・あ、この子!どこかで見たことがあると思ったら、『情報部』の子じゃない!」
アフ男を、ベットに寝かしつけたあと、保健医の先生が思い出しポンと手を叩いて言った。
「情報部?ってなんですか?」
先生に、情報部がなんなのか聞こうと思ったが、運悪くチャイムが鳴り、僕だけは授業に出るようにと保健室を出されてしまった。
情報部って言い方が気になるが、パソ研ということにしておいた。
<後編へ>
時のアルマ 善き魔女編 第6話 目撃者(… 2009.12.29
時のアルマ 善き魔女編 第6話 目撃者(… 2009.12.29
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