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2006年08月09日
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カテゴリ: 読書ノート
『東京奇譚集』 村上春樹


毎日ミナコ
てことは随分人気の本だったんですねぇ。
知らなかった。
しかも、予約していた事もすっかり忘れておりました。
図書館のも本だから、やはりさっさと読まねばいけません。
買ってきた本みたいに 積読 わけにはいかない。

という訳で、読みかけの本は置いといて、早速読み始めました。そしたら、以外に面白くて、さくさくと読み進んで私にはめずらしくあっという間に読み終わってしまいました。

村上春樹なんて、普段の私の視野の中にはぜんぜん入ってこない。

でも、読んでみるとへーって感じで、これだから、ブログのレビューはばかになりません。
ちょっと変わったお話ばかりの短編集です。
たまには現代小説もいいですね。時代背景とかくだらない知識を仕込むようなめんどくさいことしなくてすむもの。

という訳で、短編集です。以下ネタバレしまくりです。


『日々移動する腎臓のかたちをした石』

よく、「女は子宮でものを考える」なんていうけど、たしかに、女性と子宮は切り離せない。そして、毎月の生理によって、女性たちは常に自分の体の中にある子宮を確認せざるをえない。子宮からは常に女性ホルモンが分泌されていて、女性の体と心をも支配しようとしている。そして女性達は常にそれを認識し続けている。子宮は子供を作るための臓器であり、自分の遺伝子を後世に伝える大切なツールなのだから。
それに比べて男性のそれにあたる話はあまり読んだ事がない。
このお話における腎臓というのは、つまり、肝臓とか、胆臓とか、胃とか、腸とかでは絶対ダメで、それはやっぱり腎臓じゃないとならない。腎臓なんて臓器はもちろん子宮のように自己主張が強くないから、ほとんどの男性は自分の性器に比べて、腎臓に対しての認識が薄い。性器は欲望のためのものだが、腎臓は男性に自己の遺伝子の伝達を意識させようとしている。

小説家である主人公、 淳平 が、作中で書いている小説の中で、ヒロインの 女医 が腎臓にそっくりな石を見つける。ここで、ヒロインの職業が医師なのは、腎臓の形を日常的に知っているのなんて医者くらいなものだからだ。
淳平は父親に「人生で出会う中で意味を持つ女は三人しかいない」と洗脳されている。三人なんて数に区切っちゃうものだから、彼のプレッシャーはなかなかに重い。自分の生涯の伴侶を見つけるのにチャンスは三回だよなんていわれても、困る。無制限なら手当たり放題試してみればいいのだが、数量制限なんかされたら、たまったもんじゃない。それでも、三人前もってセレクトしてくれて、目の前に並べてもらってどれがいいとかいうのなら、まだどうにもしようがあるだろうけれど、その三人が何時現れるかもわからないし、出会ってもすぐにそうですなんて教えてもらえないし、別れた後でやっと気がつくという状況では辛いですね。

彼は既に一度目のチャンスを逃している。そして、二人目として登場する キリエ に、そうと気づくのは彼女と別れてから。彼の潜在意識は彼の書く小説の中で、女医に対して動く腎臓石として自己主張するのだが、彼はそれときずかない。石というものが精一杯の意思表示をしようと思えば、自力で動いて見せるくらいしかない。女が好きな男にたいして、子宮のうずきを感じるように、淳平もマタ、キリエにたいして、腎臓のうずきを感じているのだが、なにしろ、腎臓というのは自己主張のない臓器なので、きずきにくい。彼はキリエに対して、伴侶となって自分の遺伝子を伝える手助けをしてほしいと望んでいるのだが、その本心は、なかなか彼の表面に出てこない。やがて、小説の中で、ヒロインの女医が未来のない不倫の相手との決別を決めたように、キリエもまた、淳平との未来を切り捨てて、自分の人生を歩み始めてしまう。会えなくなったキリエに恋情を残している彼の心そのままに、女医の捨てた腎臓石は女医のもとに戻ってくる。けれど、もう決してキリエと結ばれる事がないことを明確に意識し、受け入れた時、女医のてもとからも、腎臓石は消える。彼はキリエに遺伝子を託す事をやめた。
淳平のチャンスは残すところあと一回。できますれば、彼が最後の一人を捕まえる事が出来ますように。

まだまだありまして、明日に続きます。



東京奇譚集










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最終更新日  2006年08月09日 09時21分24秒
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