ふつうの生活 ふつうのパラダイス

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2006年11月20日
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カテゴリ: 読書ノート


そんなことはいいとして、なかなかハードな内容でした。先日の奈良の放火殺人事件とよく似てますね。もっとも、奈良の事件は勉強させてるのが父親で、しかも、暴力つきなので、なおさらひどいですが。

「東大さえ出れば、将来なんにでもなれる。そんな自由な人生を子供に与えたい。」
という妄想を信じて、子育てに打ち込む母親と、三流大学出で人生に希望の見出せない父親。

「子育ての啓蒙書の通りに育てさえすればかならず東大に受かる優秀な子供が育つはずだ」
と信じているこの母親はすごいです。が、確かに、あの手の本を読んでいると、このとおり育てればすごくいい子供が育ちそうだなっていう気になっちゃうものです。でも、実際、このての本は所詮机上の論理です。ですから、子育てには実際には他のいろいろな要素が絡んでくるので、本の通りには行かないし、子供は思うようには行動してくれないし、しかも本を読んでも実行する母親がその本に書いてあることをきちんと読み取れずに誤解のある解釈で実行してしまうというのもありえます。だから、本の通りになんてまずならないんだけどね。

大概の人は途中で、飽きてくるか、めんどくさくなってやめますしね。

まあ、ほとんどの子育ての啓蒙書はごく一部の狭い視野でしか子育てを見ていないものです。
大学のえらい先生たちが必死になってこんなくだらない研究を日夜やってるのかと思うと、ちょっとばかばかしくもなってくる。

ところで、東大出たら、もったいなくて、変な職業になんてまずつかせたくないと思うんですけど。普通は。


それにしても、この本。

母親の行動は非常に壮絶ではありますが、どうも、女性としての内面が描き出されていない。人間像の描き方が浅い。ただ本の通りに子育てをするんだということしか考えていない。ここまで妄信するからには、そこにいたるまでの彼女の人生の遍歴、感情の葛藤などがあるはずだと思うのですけど。
あくまで作者が描こうとする「勉強と学歴ににおかしくなっていく母親と子供、家族」を描き出すために、「ストーリー構成に都合のよい人物」としてしか、描かれていないところに文学作品としての浅さを感じざるを得ないともいえます。

そして、父親。自分の人生にすでに未来を感じられなくなっている彼は、彼の人生を面白くしてくれそうだという理由で妻を選んでいます。自分の人生を充実させるのは誰でもない自分自身。じゃないのかな。そして、会社や人生で面白くない時、「いいんだ。自分には、将来東大に入るはずの子供がいるんだから」と思うことで自らの心を慰め、ごまかす。ちょっと父親として情けないですよねえ。サラリーマンてこんなものかなあ。この父親像は今現在もぜんぜん変わってないよね。あいかわらず。

さて、幼少期から一切の遊びの時間を削り取られてすべて勉強に向けさせられる長男。思うように伸びない成績にいらつく、母親、そして、子供。だんだん家庭内の状況は壮絶になっていきます。

この状況で、わが子ががすでにどうにもならないつらい状況に置かれていることに父親である彼は気づいていたはずだ。とめられたのは彼だけだったはずなのに、それでも、止めなかったのはなぜなのだろう。

長男が精神障害に陥って入院した段階で、たいがいの親なら、やめてると思うんです。まあ、小説だから、ちっょと過激に描いてあるかなと思いました。

でも、先日の奈良の事件のことを書いた雑誌の記事を読んでみると、この小説とそっくりなんですよね。現在でも、こんなことやってる親がいるんだと思いました。

しかも、この奈良の事件の父親が、彼の母親にやはり同じように育てられたそうです。いるんですね。小説のままの母親って今でも。

実際勉強のし過ぎでおかしくなった子供たちや、使えない高学歴者を見て、社会的には、勉強のさせすぎがいかによくないか。子供時代の遊びがいかに大切か、この小説の出た当時、そういう反省が社会の中に生まれたはずなんだけど。

長い時間の間にまた、過激な受験勉強の価値観が再生し始めているのでしょうねえ。

最近は、中学受験が再燃してますからねえ。
危ない危ない。

それで、この本の物語は生まれる前から、優秀な子供を生むプロジェクトが始まってます。夫婦の食事療法からスタートです。
そして、ずーっと母親がついて勉強。さらに、中学受験のための塾通い。しかし、入学はするものの、超難関私立校のなかで、思うような成績がとれずに、だんだん精神的におかしくなっていく長男はやがて、弟を殺そうと考える。

こわいですね。

ところでこの物語に中で、長男と対象的に育てられる次男が以外に成績がいいのです。知能指数も長男よりいいし。
幼少期は遊んでばかり。にもかかわらず、一応塾に通って兄と同じ学校に受かってしまう。その後の成績も追いついてしまう。
友達のいない長男とは逆に沢山の友達や、彼女。性格的にもごく普通の次男。

子供なんてほっといても育つということもまた、作者の言いたかったことのひとつなのでしょうか。

それにしても、この中に書いてあること。時々、読んでいて自分にも当てはまることがあって、ちょっとドキッとします。
たとえば、子育ての啓蒙書に書いてあることを信じて自分の子育てにも応用したことありますものね。

受験に失敗したら、次は孫にもなんて考えちゃうところとか。

なるべく子供にうるさく言わず、好きなように、と育てたつもりだけど、やっぱり教育ママ的なところあったかもなあとちょっと反省します。


ただ、将来のことも大事だけど、子供時代の二十年くらいの歳月は、大人の三十年、五十年に匹敵するすごく大切な時間だと思うのです。その大切な二十年をなるべく大切に楽しく過ごしてほしい。と、母は、思うのです。勉強づけにだけはしちゃいかん。






該当する本のアフェリエイトがなくってね。これで、許してね。
好きなんですよ。この小説も。↑











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最終更新日  2009年01月09日 22時58分51秒
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