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2005年06月15日
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Sent: Wednesday, June 15, 2005 10:13 AM
Subject: 15日の日記



今日はとうとう休講にして治療を受けることにした。

鬱病の人を心配しているうちに、自分自身が鬱になっていた。

一ヶ月もの間気が付かなかったのは迂闊だが、過ぎてしまった時間は取り返しようがない。

それより、このことに気付かされたのは、昨日の本のお蔭かもしれない。





どうして僕にはもう誰も相手にしてくれる人がいない、などと考えてしまったのだろう。




家族や職場の同僚や心友の顔に混じって、今は休診中の漢方医の事が思い出された。

彼の心臓病はいまどうだろう。漢方で治る領域ではないから西洋医学によって加療中だが、もうすでに半年になる。

早く現場復帰してもらいたいものだ。



彼の診察の期待できない今、どうすれば・・・

比較的軽い症状なら漢方にも鬱の対策があることを思い出した。

半夏厚朴湯という漢方の抗鬱剤を飲んだら、ものすごく眠くなった。



二時間以上連続して寝たのはどれくらい久しぶりだろう。気がついたら五時間も寝ていた。

頭の中に張っていた雲の巣が随分小さくなっている。



完全ではないが、頭痛も軽減され、体も軽い。

急ぎの仕事はあるのだが、気持ちが軽いわりに、背骨の痛みが激しい。





手元にあった『蓮の露(はちすのつゆ)』を取り上げた。

最晩年の良寛と知り合った貞心尼が編纂した二人の和歌を集めた歌集だ。



十六歳か十七歳で嫁いで、五年後に亭主と死別して出家した貞心尼が、良寛を噂に知ったのは二十代はじめ、二人は四十歳以上離れている筈だが、その交遊は良寛の亡くなるときまで続く。



  いついつと待ちにし人は来たりけり 今は手をとり何を嘆かん
良寛







  君にかくあひ見ることのうれしさに まだ覚めやらぬ夢かとぞ思う
貞心尼



は深く心にしみこむ。



私も感謝の心で見ることが出来たなら、どれほどの感激を伴って出会いを受けとめられただろうか。



二人の歌を読んでいると、お互いに相手の事を思うだけで、心が温かいものに満たされていくのが、本当に手に取るようにわかる。

良寛が実に正直に心のうちを詠っているのが、ほほえましい。



  君や忘る 道や隠るる このごろは 待てど暮らせど 訪れのなき
良寛



は、例年になく雪の多い冬に道を閉ざされて、老齢の良寛がひたすら待ちわびる心を包み隠さず詠んだものだ。

若いとはいえ貞心尼とて女の身、心に任せぬ雪道の難儀を人づてに伝えるよりなかったのであろう。



  ことしげき むぐらの庵の 閉じられて 身をば心に 任せざりけり
貞心尼



 やがて春になるや、翼を得た小鳥のように、貞心尼は良寛の草庵を訪ねる。

体力もめっきり落ちた良寛は、貞心尼の手を握ったままじっと離さない。

 ようやく離すと、近くの紙に筆を走らせた。



  天が下に 満つる玉より 黄金より 春の初めの 君が訪れ
良寛



こんなに正直に、何の衒いも躊躇いもなく心を伝え得るのは、良寛が本当に自由な境地を獲得していたからだろうな。



私も自分で自分の心に手かせ足かせをはめるのは、もういい加減によして、残る人生を楽しみたい、そう思いながら再び薬のせいか、眠りについていた。





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最終更新日  2005年06月15日 21時24分09秒
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