♪ 夕立ちに精とりもどす紫陽花の季節は盛夏となつてしまへり
そんな気候のいたずらか、もう死語になったかと思われる「夕立」があった。止んでまた降る猫の目の、かなり強い雨だった。
これで雷でも鳴れば私は嬉しいのですが、路上で降られて酷い目に合った人も多かったことでしょう。
紫陽花が咲いている時期にこの猛暑は似あわない。雨に濡れてこそ紫陽花は美しい。
そんな紫陽花を詠んだ歌が沢山あるので幾つか拾い上げてみました。紫陽花と雨との取り合わせの妙味を、暫し楽しんでみましょうか。
あぢさゐの花の花間(はなま)にやはらかく雨ふりしづむ 夕雨夜雨
高野公彦
美しき球の透視をゆめむべくあぢさゐの花あまた咲きたり
葛原妙子
雨やみてあぢさゐの藍みなぎれる藍の珠より満ちてくる刻
雨宮雅子
天も地もか黒となして雨の降り紫陽花の花水際に咲く
都筑省吾
曇り日に咲く紫陽花の花の下青年の蛇は埋められゐむ
前 登志夫
ほほえみの裾がめくれて退屈な紫陽花が見ゆ陽にふくれつつ
吉川宏志
あぢさゐの藍のつゆけき花ありぬぬばたまの夜あかねさす昼
佐藤佐太郎
紫陽花の花を見てゐる雨の日は肉親のこゑやさしすぎてきこゆ
前川佐美雄
森駈けてきてほてりたるわが頬をうづめむとするに紫陽花くらし
寺山修司
過ぎゆくは紺の歳月 紫陽花のめぐりの闇のなまあたたかし
小野興二郎
エミリといふ名にあこがれし少女期あり紫陽花濡るる石段くだる
栗木京子
戸口戸口あぢさゐ満てりふさふさと貧の序列を陽に消さむため
浜田 到
思いきり愛されたくて駆けてゆく六月、サンダル、あじさいの花
俵 万智
紫陽花といふ名は誰が名づけけむ雨季を彩る三字の名詩
熊沢雅晴
紫陽花も花櫛したる頭をばうち傾けてなげく夕ぐれ
与謝野晶子
昨日より色のかはれる紫陽花の瓶をへだてて二人かたらず
石川啄木
紫陽花のふふむ雨滴を揺りこぼす言はば言葉がすべてとならむ
河野裕子
嘘いくついいわけいくつ吐きて来しくちびるに花花は紫陽花
藤原龍一郎
梅雨ぐもりただに物うきのみならず紫陽花の花は色濃かりけり
岡 麓
病監の窓の下びに紫陽花が咲き、折をり風は吹きに行きにけり
斎藤茂吉
紫陽花のまだとゝのはぬうてなに、花の紫は色立ちにけり
釈 迢空
夏もなほ心はつきぬあぢさゐのよひらの露に月もすみけり
藤原俊成
夕立に濡れてたちゐる紫陽花は今日一日の残渣のごとし
◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題してスタートすることにしました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
★ 「ジグソーパズル」 自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)
☆ 短歌集 「ミソヒトモジ症候群」 円居短歌会第四歌集2012年12月発行
● 「手軽で簡単絞り染め」
■ いい天気だが・・・政治は・・ 2017.10.08
■ 安楽死という選択肢 2017.10.06
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