歌 と こころ と 心 の さんぽ

歌 と こころ と 心 の さんぽ

2017.02.09
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カテゴリ: 気まぐれ短歌

♪ 言の葉を音に変へるを旨として宮中と民の縁(よすが)とするを







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*如月の日はかげりつつ吹雪く野に山中(さんちゆう)和紙の楮をさらす

 季節と移りゆく時間、風景と人の働く姿がありありと浮かんでくる。一年で最も寒い季節の中で、生業としての伝統的な日本の文化を支える仕事。「日がかげりつつ吹雪く」という言葉が静かさの中に緊張感を与え、楮を晒すという言葉から和紙の柔らかい白が浮かび上がってくる。それが雪の白さと相俟って寒中の清々しさが立ちあがってくる。山中和紙という名前も歌の雰囲気に寄与している。
 如月という語の持つ柔らかさと「きさらぎ」という音の響きが、寒さの中にもほんの少しづつ春に近づいている感じをも出している。
 生活を詠んだ歌


*歩みゆく秋日ゆたけき武蔵野に浅黄斑蝶(あさぎまだら)の旅を見送る

 広々とゆったりとした秋の空の青と、あさぎまだらの黄色の対比が美しい。画面に動きが有り、この蝶の長旅を見送っている目線には情愛が感じられる。武蔵野という名前が広々としてゆたかなイメージを浮かび上がらせ、ウォーキングをしている健やかな作者のこころと蝶が同化しているようだ。国木田独歩が、「自分が今見る武蔵野の美しさはかかる誇張的の断案を下さしむるほどに自分を動かしているのである。自分は武蔵野の美といった、美といわんよりむしろ詩趣(ししゅ)といいたい」と書いた文章も頭を過ぎり、浅黄斑蝶の美しさと共に憧れすら抱かせる。
 生物を詠んだ歌


*宇宙より帰る人待つ広野には引力といふ地球のちから

 宇宙へ飛び立ってゆく時とは反対に、地球の引力があるからこそ戻ってこられるという逆説的で哲学的な意味合いを含んでいる。地球の広野で引力が待っているという視点が秀一。ちっぽけな人間が地球を飛び出して宇宙を旅するという、現代科学の発達に対する尊敬の念と、同時に畏怖をも内包している。宇宙と地球と人との大きさの対比、広漠とした宇宙の中に生きる人間の儚さもにじみ出ている。
 科学を詠んだ歌


*筆先に小さな春をひそませてふつくら画(ゑが)く里の野山を

 筆先に春をひそませて描く、それもふっくらと描くという表現が巧いい。春の里山を愛でる気持ちが溢れていて、その絵を見てみたい気持ちが湧いてくる。水彩画の特徴がよく出ていて、春の里を描くのは油絵よりも水彩の方がいいんだよと、言っている様でもある。
 「小さな春」ということばが早春を思わせ、ようやく来た春を絵にすることで内に取り込みたいという思いが出ている。結句に持ってくることで、春の里山をふわっと浮き上がらせることに成功している。
 趣味を詠んだ歌


*手術野(しゆじゆつや)をおほふ布地は碧み帯び無菌操作の舞台整ふ

 お題の「野」をこんな風に使えるのは医者ならではのこと。臨場感がありピンとした緊張感のある歌だ。「碧み帯び」というところが意味深で、「無菌」ということばと呼応して厳粛な雰囲気を醸し出している。うす緑色か或いはうす青色の布が掛けられた手術部の一部。そこからのぞく肌が、煌々と照らされた照明の下で今まさに始まろうとしている無菌操作をじっと待っている。神聖な雰囲気も漂うのは、言葉を整理して端的に詠んだことによる。
 非日常を詠んだ歌


*父が十野菜の名前言へるまで医師はカルテを書く手とめたり

 父親の認知症、高齢社会を詠んでいる。医師の手元に焦点を当てて、短時間診察が問題になったりしている背景を見据えている。時間をゆっくり掛けてくれている医師への尊敬と感謝の気持ちが現れている。「十」という具体的な数字が実感をともなってよく効いている。その先生の暖かい眼差しと診察室の雰囲気が、読み手にも伝わって来る。
 高齢社会を詠んだ歌


*積み上げし瓦礫の丘に草むして一雨ごとに野に還りゆく

 地震の被災地だろうか、積み上げたまま放置されている瓦礫。人手も予算も足りず、その存在さえも忘れられていく。天災を前にして人間は無力で何と小さな存在かを想い、自然のもつ生命力に畏れいる作者。淡々と流れる様に詠みあげて、時がすべてを解決してくれるという諦観と達観の内に生きている自分を見つめている。
 災害を詠んだ歌


*友の手をとりてマニキュア塗る時に越後平野に降る雪静か

 「手をとりて」という表現から病床にある友を連想する。介護を必要としている人なのかも知れない。単に「友の手に」とするとそういう感じにはならないからで、具体的に書かない事でその状況を想像させる余地を残しているため、余韻が生まれている。越後平野という広がりを感じさせる言葉によって、静かに流れゆく時間が描かれ、結句に哀感がにじみ出ている。
 介護を詠んだ歌


*野原ならまつすぐ走つてゆけるのに満員電車で見つけた背中

 上の句での勢いが、下の句で意外性のある展開となりもどかしさに変わる。語順が成功している。野原と満員電車の対比が面白く、「まつすぐ走つて」に青春のひたむきさが現れている。具体的な言葉を使わずに相聞歌として成り立たせているところが秀逸だ。
 青春を詠んだ歌(口語の歌)


*夏野菜今しか出せない色がある僕には出せない茄子の紫

 瑞々しい夏野菜の生命力と自然の力に対する畏敬の気持ち。「出せない」の繰り返しによって、作者の真摯でありながらも前のめりになっている今の姿が描かれている。自分には出来ない事が有ることへの焦りと無力感。「茄子の紫」の重厚さを持った結句によって力強さを伴った歌になっている。
 生命力を詠んだ歌(口語の歌)


 「短歌研究」2月号に誰だったか、歌会始について書いている。それによれば、選ばれる基準には技巧的に優れているといったようなものは重要視されていないようで、全体的なバランスを重視しているらしい。
 「歌会始」は、神と天皇と言葉に託されている伝統的なしきたりを踏まえた上に成り立っている。歌会始全体の中で、天皇(皇族)と選者の歌、一般人の歌とのつかず離れずのバランスをとるというのは当然の事なのでしょう。

 選ばれるのは宝くじに当たる様なものだと思う。選ばれなかったからと言って落胆するものでもないようだ。




◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題してスタートすることにしました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。

「ジグソーパズル」  自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)

短歌集 「ミソヒトモジ症候群」 円居短歌会第四歌集2012年12月発行

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最終更新日  2017.05.17 13:56:39
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題しました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
◆2017年10月10日より つれずれにつづる「みそひともじ」と心のさんぽに改題しました。
◆2019年6月6日より 「歌とこころと心のさんぽ」に改題しました。
「ジグソーパズル」  自作短歌百選(2006年5月~2009年2月)

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