歌 と こころ と 心 の さんぽ

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2025.08.21
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テーマ: 登山の記録(813)
カテゴリ: 思い出
 中年に差し掛かろうとする頃、悪戦苦闘して登った山の手記が見つかったので、記録として残しておきたい。脱サラして染色作家としてスタートし、作品作りに取り組んでいた時期で、テーマとモチーフを追い求めていた。

「南アルプス 地蔵岳登山」 (1990年9月8日~10日)
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 状況から考えても険しい山岳地帯でなければ滝などあるはずもない。それもある程度の規模と雰囲気のある滝となると、条件は限られてくる。結局、岳人別冊「‘90の夏山」の付録地図によって、南アルプスが中央自動車道が使えるところに絞った。甲斐駒ヶ岳の東南に位置する鳳凰三山に四つの滝が連なっているのを発見。それも、一つの登山ルートを登って行けば四つとも見られるようなのでこれ幸いと、ここに決めた。
 ドンドコ沢という沢沿いの登山道で最初の滝までおよそ2時間。そこから鳳凰小屋まで滝を順に見ながら3時間で登れると、地図にはコースタイムが書いてある。片道(登り)5時間、下りが3時間20分で、計8時間20分。写生をしたり写真を撮ったり、昼食のラーメンを作って食ったりすると10時間ほどの必要最小限のタイムとなる。コースタイムの通りに登れれば滝だけ見て日帰りも可能かと思えた。

 地図で見るとほんのわずかな距離にしか見えない。登山道の入り口までの林道の長さの方がはるかに長く大変なように見える。ところがだ、等高線をよく見れば分かるのだが、標高差が林道とは全く違うのだ。そんなこともロクに考えずに標高2000m以上の山へ、ロクな準備もせずに登るというのだから無茶な話だ。
 心は久し振りの登山でウキウキしているし、以前からどこかの山へ登りたくてウズウズしていたところだ。滝を見たいというのは口実に過ぎなかったのかも知れない。今年は息子と富士山へ登る約束までしていたくらいだ。小型のリュックはだいぶ前に買ってあったし、今年の夏のキャンプに必要だからとキャンプ用のガスコンロも買った。登山に必要だからという気持ちが半分以上を占めていたように思う。
 自分を試してみたいという思いもあった。ヒザが弱って来ていて、運動は必要だがあまり激しい運動は止めた方が良いと医者に言われていたこともあって、果たして登山が出来るのかやっぱり無理なのかを確認したい気分もあった。息子との富士登山は、息子が風邪をひいたり身内に不幸があったりで行く事ができずにいた。来年こそ行こうと言ってはみたが膝の不安を持ったままだ。密かに試す機会を待っていたのだろう。これでダメなら諦めるしかないなと、覚悟の登山だった様に思う。

 妻と結婚前に富士山に登ったのが20代の半ば過ぎ。その時以来の山登りということになる。スポーツらしいものは何もしておらず、普段から運動不足気味である。週2~3回の7kmのジョギング程度では筋力を維持するのは難しい。しかし、何もしてないよりはましだろう。
 日帰りが無理なら上にある鳳凰小屋に泊まればいい。地蔵岳の頂上途中ににあり、泊まると決まれば頂上まで登ることも夢ではない。2,700m程の山へ一日で登れればままあ自信を持ってもいいのではないか。しかし、富士山以外に2,000m級の山へ自力で登ったことはない。乗鞍はスカイラインの終点から少し歩くだけで頂上に立てる。木曽駒にしてもロープウェーでほとんど登ってしまうのだから、これらの山へ登ったとしても登山をしたとは言えないだろう。
 とにかく登れるものなら地蔵岳の頂上までは行って見たい。一応日帰りと泊まりの両方を頭に入れて準備をする。車での仮眠用に毛布とシュラフ。どちらが良いか使って見て決めることにする。それにクッション。運転はなるべく楽な方が良いので短パンに草履を履いていく。リュックには二日分の昼食用のラーメンにガスコンロ、長そでシャツ(アンダー用と上着)、ベスト。セーターを入れたいが入らず止める。食器と鍋。鍋は柄が邪魔なのでビスを外しておく。カメラ・フィルム、厚手の靴下の予備、タオル、バンドエイド、スケッチブック、地図。たったこれだけでリュックが一杯になった。重さを量ってみたら丁度5kg。俺の体力ではこれぐらいが限度だろう。
 夜10時ごろに出発すれば、早朝登山で涼しくて気持ちがいいだろう。時間の配分からいっても充分のはずだ。夕食後、少し眠っておこうと思ったが甥っ子二人が泊まりに来ており、落ち着かなくて眠ることができない。10時に甥っ子に「早く寝なさい!」と一喝して、Tシャツに短パン、草履履きでいざ出発。

 小牧インターまで1時間もかかった。41号線が工事中でまことに走りづらく、思ったよりも時間がかかってしまった。途中、恵那で仮眠し、韮崎に2時半頃に着く。深夜スーパーで朝食の稲荷ずしとパンを買い、ついでに林道の入り口までの道を聞く。甲斐駒ヶ岳に登るなら白洲から入る人が多いと店員が言うが、自分はすぐ近くの林道から上がる予定でいる。地図を出して来てくれ、凡その道を教えてもらう。言われたとおりに行って見るが深夜の事で入り口が分からず、もし間違えてとんでもない道へ入り込んでも大変なので、とりあえず夜が明けるまで眠ることにする。Tシャツ短パンのまま毛布をかぶって寝たがやはり少し寒かった。

 2へ続く
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最終更新日  2025.08.21 10:59:15
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題しました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
◆2017年10月10日より つれずれにつづる「みそひともじ」と心のさんぽに改題しました。
◆2019年6月6日より 「歌とこころと心のさんぽ」に改題しました。
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