歌 と こころ と 心 の さんぽ

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2025.08.26
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テーマ: ジャズ(206)
カテゴリ: 音楽

♪ 晩年に羽化した蝉が鳴くように花を咲かせる夢をみている



 「ルグラン・ジャズ / ミーツ・マイルス・コルトレーン」このレコードは良い。大好きだ。



 50年代の録音とは思えないモダンで若々しいサウンドで、いかにも洗練された上品なジャズに仕上がっている。

 この時、ルグラン(1932年生まれ)は若干26歳。
 ジャズ・ピアニストとしても活動していて、ジョン・コルトレーン、ジャック・ジョーンズ、ジョニー・マティス、リナ・ホーン、サラ・ヴォーンら大物ミュージシャンとの共演作品も数多い。

 マイルスは1955年に、ジョン・コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズのメンバーで、第1期クインテットを結成。1957年に、ルイ・マル監督の映画『死刑台のエレベーター』の音楽を制作している。1958年は、バンドはキャノンボール・アダレイを加えて6人編成となり、1959年には『カインド・オブ・ブルー』でモード奏法を初めて取り入れている。

 ハードバップからモードに移行する前のマイルスは、私の一番好きな時期でもある。
 録音は、6つ年上のマイルス(1926年生まれ)の黄金時代。あの気難しいマイルスを説得して録音にこぎつけ、すばらしいアルバムをリリースしてみせた。



 ミシェル・ルグランは、映画音楽で活躍し「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」、「華麗なる賭け」(主題歌「風のささやき」)「おもいでの夏」、「愛と哀しみのボレロ」「栄光のル・マン」「ネバーセイ・ネバーアゲイン」など、数々の映画音楽を創作し、20世紀後半のフランス映画音楽界を代表する存在。

 アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、グラミー賞など数限りない栄誉に輝くマエストロだ。その彼がジャズ・アルバムを制作したのだ。快哉の傑作アルバム。

 「ミシェル・ルグラン自伝」 によると、ジャズにのめり込みはじめた16歳の時、ルグランは「交響曲作家か、バップ作曲家か、どちらの道を取ろうか? どうやって選ぼうか? あるいは、そもそもなぜ選ぶのか? これらの文化を全部混ぜ合わせて結びつける方法は存在しないのか?」という疑問を抱いていたという。

 早熟の「バーチュオーソ」の言う事に、彼のマイルスも従う他なかったのだろう。才能に裏打ちされた理論とアイデア、構成とアレンジは、他の楽団とは一味ちがう。納得の結果がこのアルバムのすべてだ。
とに角、マイルス以外のメンバーも凄い。




 編成はA、B、Cの3種類。マイルス、コルトレーン、エバンスは「A」のみの参加だ。

 特に5曲目の「チュニジアの夜」は、デューク・エリントン、ギル・エバンスを敬愛しつつ、独自色を出した得意のビッグバンド編成。
 トランペット4本、トロンボーン2本、アルト・サックッス2本、テナー・サックス、バリトン・サックッス各1本。ピアノ・ダラムス・ベースのリズムセクションに、フレンチ・ホーンにバイブを加えた、クラシックと融合したような音楽を演出している。

 よく有るパターンを巧みに崩した構成とアレンジが、何とも心地よく展開していて飽きさせない。



 ダンス音楽、クラシック、ビ・バップ、それぞれの特徴を取り入れながら、ルグランにしか出せないオリジナリティーを余すところなく発揮していて、何度聴いても新鮮さを失わない。

 何と言っても、ジャズの巨匠・マイルスに遠慮せず一切の妥協を許さず、思い通りに編曲した作品を企画した通りに演奏させた手腕が凄い。「50年代末のジャズ・シーンにあって、きわめて特異な輝きを放つ作品」という評も頷ける。

 50~60年代のジャズが一番好きな私としても、特殊な1枚としてこれか何度も聴くことになるだろう。その度に新しい発見をしたりして、ますます好きになっていくのだろう。





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最終更新日  2025.10.29 07:48:32
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題しました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
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