「えいえい、おう―」の勝鬨
◇菊花の巻
その日は雪模様、安兵衛が九兵衛の店に五十人の寄合いで二階を使いたいとの予約をします。
おとわが臥せっている部屋に 金右衛門が薬湯を持ってきます
。忠左衛門も一緒です。おとわは、この分なら二、三日で起きられそうだと言います。
薬湯を飲むと、忠左衛門に
おとわ「忠左殿・・いよいよ、今夜ですのう」
忠左衛門「うう、ううん・・・今夜じゃ」
吉良家では茶会の招待客が次々とやって来ている同じとき、内蔵助は今生の別れに内匠頭夫人を訪ねていました。
久兵衛の店には赤穂の浪士が集まりつつありました。
忠左衛門と前原伊助は金衛門より先に行きます。
おとわはみんなが出かけて行く音を聞いていました。金右衛門は行ったのか・・・音がしたのでハッと思っていると、障子が開き、金右衛門が来ました。
金右衛門「おばば様、 しかとご覧くださいませ。・・金右衛門が一期の晴れ姿で
ございます
」
金右衛門のその姿を見たおとわは感激します。
おとわ「・・それでよし、それでよい。何かと、そなたの、足手まといになりな
がら、生きながらえた婆もこれで本望、ご先祖様もきっと喜んでおられ
ましょう。・・・ さぁ、・・早ういかっしゃい
」
金右衛門「 はい
」
金右衛門は行こうとしますが・・・ お婆が気がかりで・・・
金右衛門「 明日になれば、きっと、おたかが参りましょう
。・・それまでご辛抱を
なされませ」
おとわ「分かっています、 そのようなことは気にかけず・・・早う
」
金右衛門「はい」
金右衛門「 お薬湯は、そこの火鉢の・
・」
おとわ「ええ、女々しい」
おとわ「もし遅れをとったれば、何となさる・・ 早う行きなさらんか
」
金右衛門「はい」
金右衛門はお婆様のいうように部屋を出ます。 後ろ髪を引かれながら
浪士が待つ店へ急ぎます。
内蔵助と主税もやって来ました。そこ頃、安兵衛妻で弥兵衛の娘のお幸と別れを告げていました。
雪の降る中、大石内蔵助他四十七士は松坂町へ走ります。
山鹿流の陣太鼓が響き討ち入りです。
(
ここでは、すみません
、 金右衛門の立廻りから
少し)
金右衛門はおたかと会えました。
金右衛門がおたかを見つけ「 おう、おたか
」、おたかも「 あっ、金右衛門様
」と走ってきます。「吉良は・・」「 はい、こちらです
」おたかが案内します。
おたかが寝所へ案内します。が、上野介の姿はありません。
金右衛門「まだ、ぬくもりがある」
そこへ八十右衛門がやって来ます。
金右衛門「 吉良が逃げた
」
八十右衛門「 なに逃げた
」
ぬくもりがあるのでさほど遠くへは行っていない・・手分けして探します。
上野介の部屋は老中の他の出入りは許されなかったとおたかから聞き仕掛けを探します。掛け軸のうしろの抜け道を行くと足跡があり、その足跡は小屋に続いています。中の様子を伺って安兵衛の呼子が響き渡ります。浪士たちが小屋の前に揃います。
引出された上野介は内蔵助に「吉良上野介殿にござりまするか ?
」の問いに「とんだことじゃ、わしはさような・・」そこで、おたかを呼び、
内蔵助「申せ、この者は」
おたか「当家の主に相違ございません」
内蔵助「大石内蔵助良雄、亡君になり代わりみしるし頂戴つかまつる」
内蔵助は懐におさめていた橋本平左衛門の位牌をおたかに渡し、「よいか、岡野の婆と一緒に、仲良く幸せにくらすんだぞ」と言い残して、夜が明ける空にそびえている千代田の城をにらみ、「 えいえい、おう―
」と 勝鬨をあげるのです
。
(完)
(注)
順番でいきますと、次回は 47
作品目「新吾十番勝負第一部」なのですが、現在映画館やテレビで見られるのは「新吾十番勝負第一部・第二部総集版」になっていますので、
「新吾十番勝負第一部」は、 53
作品目「新吾十番勝負第二部」のところで「総集版」として御案内させていただき、 次回は、48作品目の「おしどり道中」になります。
水戸黄門・・・(6) 2023年11月28日
水戸黄門・・・(5) 2023年11月23日
水戸黄門・・・(4) 2023年11月17日
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