人の心には三毒というものがあり、それは貪りの心、怒りの心、愚痴の心に代表される煩悩があります。彼岸はこの煩悩の心がある世界をこちらの岸ということで此岸、煩悩でないさとりの世界をかの岸ということで彼岸としています。このさとりの岸に渡る方法として六つの修行があります。
布施、自戒、忍辱、精進、禅定、智慧があります。
布施とは施すこと。物だけではなく真心や、やさしい言葉であってもよいのです。
自戒はお釈迦様の守るべき戒を守ること。法律であったり礼儀でもよいのです。
忍辱とは耐えることを耐え、怒りの心を起こさず心を安定させること。
精進とは一生懸命努力を惜しまないこと。禅定とは心を静めること。
智慧とは正しい見方を失わず道理を見極めること。
特に大切なことは、この六つの修行は手段ではなく、目的でなくてはならないことです。曹洞宗の御開山である道元禅師はこの六つの修行は、最高のさとりそのものであると示しています。これは修行するからさとりがあるのではなく、私達の本質は仏様なのです。その仏様である私達が行じるからこそ本来を表すのです。
さて、いきなり六つも覚えられない実行できないと思う方もいらっしゃるでしょうが、この六つの修行はそれぞれバラバラなものではなく、また順番があるのでもなくひとつのものです。道元禅師はこの六つのなかの一つだけでも本当に実践するならば、自ずと他の五つも実現すると示しています。自分のこころを見つめひとつだけでも実践してみてはいかがでしょうか。