Jan 5, 2006
XML
カテゴリ: 家族。

年末、実家に帰った時、姉が言った。

何が、大丈夫なんだ!?
私は姉がマウスをクリックする直前に慌てて年賀状の向きを変えた。

ウィ~ン。カタン。

間一髪でプリントは成功した。


「スナイダーズは全くもう、ちっとも役に立たないんだから」
オバチャンから良く言われるセリフ。

1分1秒を争うこの職場では、キビキビシャキシャキが鉄則。そして、些細なミスも絶対に許されない。



いつもションボリしてたけど、実家に帰ってみれば…何と言う人たちの集まりなんだっ!?


あんなにテキパキしていた筈の姉は…実は、私より何倍も大雑把でテキトー人間だった。

「ほら、成功したデショ?」
出てきたハガキをピラピラさせながら姉はノンビリ言う。あのね…、私が変えたから成功したんだよっ!

「だから『まず1枚』なんて言わずにドバッとやればよかったんだよ」
バカバカ!!んなことしてたら取り返しつかなかったよ!?例え、あっていたとしても念には念を入れて…でしょーがっ!?

「んじゃあ、枚数設定するよ?」
ハイハイ。ハガキ、触るなよ!?

私はため息をついた。



「あはは。ダイジョーブ、ダイジョーブ。失敗したらやり直せばいいだけでしょーが」
プリントを無事に終え、ソレを見てホッとした私の顔を見て姉は軽く笑った。



あの…。何でそんなに大雑把なのに、何でそんな細かいこと、覚えてらっしゃるのかしら?


「スナイダーズ」
年賀状の表はPCではなく、筆ペンで1つ1つ書きながら姉は続けた。

「昔のアンタはボ~っとして頼りなくて、でもどこか冷めててヤな子だったけど、今のアンタはもっとヤな子よ~?」

「は!?」


机に向かって黙々と姉は年賀状を書いている。細い背中。

「何にそんなに怯えてるの?」
姉の言葉に指が震えた。

「今のアンタ。見てて辛いよ。何だか凄く可哀相過ぎる」

可哀相…。


「出来た。どう?うまいデショ?」
クルリと振り向くと姉は年賀状を突き出した。

姉は達筆だ。ズボラのくせに達筆だ。

「…アンタ。友達亡くしたりしたからかな~?何だか凄く慎重になっちゃったよ?ドンドン、マニュアル化してる」

痛いところをつく。他人だったら引っ叩いていた。

「ねえ。覚えてる?お母さんに内緒でアイス食べた時、アンタ、べとべとにしちゃって大変だったの」
忘れるわけがない。あんなに焦った姉の顔はアレが最初で今のところ最後だ。

「あん時、笑いながらダイジョーブ、ダイジョーブって言ってたアンタ、結構格好良かった。コイツ、神経図太いなあって思ったんだから」

あんなに怒り散らしていたのに、そんなこと考えてたんだ。


「どんなに苛められても、転校先に馴染めなくて1人でいても、アンタ、真っ直ぐ自分の信念持っていたじゃない。マイペースがアンタの取り柄デショ?」

「…今でもマイペースって言われるよ?」

姉は私の頭をグリグリ撫でた。

「バ~カ。何処がマイペースなのよ?そんな不安そうな眼をしてるくせに」

何も言い返せなくて私は下を向いた。姉は構わず頭をワシャワシャ撫でる。

「ほら。ダイジョーブって言いな」

「…ダイジョーブ」

「ホントに?」

「ダイジョーブ!!」

姉はニコっと笑った。私は一生、この人には勝てない。

「うちはね、ノンビリズボラが家訓なのよ?アンタ1人、そんなんなっちゃってどうすんの?」

ははっ。乾いた笑い声になった。参ったなあ。ボソリ呟くと、

「何年、兄弟やってっと思ってんの?」
姉は勝ち誇ったように言った。


「ダイジョーブなんかじゃない時なんて沢山あるけど…それでもダイジョーブって言っときな。そしたらきっといつか笑える時がちゃんと来るから」


ダイジョーブ。ダイジョーブ。

呪文のように唱えていた。

いつから?

きっと、初めて「寂しい」と言う感情を持ったときから。誤魔化すために呟いていた。

そんなの、逃げてるだけだ。

現実は容赦なく、次々に残酷を突きつけてきて、私を翻弄する。

逃げているだけじゃあ、間に合わない。

いつの間にか…ダイジョーブなんて言葉、信じてなかった。縋りながらも何がダイジョーブなんだよ!?って卑下ていた。



『ダイジョーブであるためにはマニュアルが不可欠だ』



対応策があれば翻弄されることなんてない。動ずる事なんてない。

でも。
そんな私をみて、姉は可哀相だと寂しげに言った。

「自分を信じて。アンタならダイジョーブ。さてと…。○○チャンたちと温泉に行くついでに年賀状、出してこようかしらね。ねえ?コレ、元旦はムリだよね?」

…明日ですけど、元旦は。

「はは。そうだよね~。まあ、良いや」
姉はホントにあっけらかんと言った。

その時、玄関のドアが開く音がした。

「ウィーッス!!スナイダーズいますか~!?」

「あら?S君。スナイダーズなら2階で花、生けてると思うけど?」
母の声。

「んじゃ、上がりますね?」
勝手に上がるな!!


「ほら。アンタのもう1人の味方が来たよ」
もう1人?

「私に決まってるでしょーが!!ほら、サッサ花、生けなさいよ?」

…アナタが年賀状のプリンターが良く分からないって言うからデショ!!


「スナイダーズ!!今年はペンションだぜ!!!」
そして私は、イキオイ良く飛び込んできた男に拉致された。


2005年、最後の夜のお話。



※追伸 スンマセン。1つ1つ思い出しながら書いたら眠くなってコレ、アップするだけで力尽きました…。
コメントのお返事&ご訪問は明日致します。ホント、力不足でスンマセン~!!オヤスミナサイ。良い夢見てね★





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jan 7, 2006 12:11:50 AM
[家族。] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: