2007年06月05日
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今日のまとめ

1.マカオでは6社の業者が営業を許可されている
2.マカオの立地はデモグラフィー的には将来性が高い
3.可処分所得の向上と歩調を合わせた開発が望ましい
4.ラスベガスの集客ノウハウと資本力が怒涛のように押し寄せている
5.キャパシティーの急増、コータイ通りへのリロケーションなどがリスク

歴史

 マカオは1999年までポルトガルの植民地でした。マカオのカジノは40年にわたってスタンレー・ホーのSTDMが独占してきました。しかしラスベガス型の地域再開発を目指すマカオ特別行政区政府は2002年から新規のカジノ・ライセンスを交付し競争を促す政策を打ち出しました。既にライセンスを保有していたSTDM(その後SJMに社名変更)に加えてウイン・リゾーツ(ティッカー:WYNN
)とギャラクシーが新しくライセンスを受けました。さらにより一層競争を促すためマカオ特別行政区は所謂サブ・ライセンス(ライセンスの又貸し)を認め、これによりラスベガス・サンズ(ティッカー:LVS)はギャラクシーから、MGMミラージュ(ティッカー:MGM)はSJMから、メルコPBL(ティッカー:MPEL)はウインからサブ・ライセンスを導入しました。つまり合計6社が競争する構図がこうして成立したわけです。

マカオを訪れる旅行者の増加について

 マカオは自動車で3時間以内のところに1億人、飛行機のフライト時間3時間以内のところに10億人の人口が居住しており、その後背地の大きさゆえに大きな可能性を秘めています。2002年まではマカオは専ら香港からの旅行客に依存していました。しかし下のグラフに見られるように最近では中国本土からの旅行客が増えています。過去5年の成長率で言えば中国本土からの旅客が年率35.7%成長、香港が年率2%成長、台湾が年率2.5%成長、日本が年率3%成長、韓国が年率21.6%成長、その他が年率15%成長となっています。中国からの旅行者の増加は新しいカジノのオープンが相次いでマカオの魅力が上がっていることに加えて個人旅行解禁や旅行の際に持ち出せる金額が増えていること、中国人の可処分所得が向上していること、交通インフラの整備などによると思われます。

マカオを訪れる旅行者数(マカオ統計・国勢調査サービス)



集客ノウハウと資本力の移植

 アメリカでは昔はギャンブルはおとなの娯楽であり、暗いイメージがありました。しかしラスベガスは業界ぐるみでイメージの向上に努め、テーマに基づいたアトラクションを次々に建設したり施設の高級化を図ったりしました。その結果、今ではラスベガスはギャンブルをしなくてもファミリーで楽しめるような場所になっています。このようにラスベガスの業者が何十年もかけて研ぎ澄ましてきた集客・経営ノウハウと資本力が今回、極めて短期間のうちにマカオに移植されることになりました。これらの要因から既にマカオのゲーミング・レヴェニュー(カジノ関係の売上高)は去年68.5億ドルにまで成長し、ラスベガスをはじめて抜きました。

ゲーミング売上高

 過去5年間のゲーミング・レヴェニューの成長率はマカオが年率約23%、アトランティック・シティが3.1%、ラスベガスが4.9%です。なおマカオはゲーミング・レヴェニューに対する依存度が極めて高いのに対してラスベガスはゲーミング・レヴェニュー以外の売上への分散が進んでいることに注意する必要があります。具体的には見本市や社員旅行、会議、カンファレンスなどにより集客するほか小売(ブランド・ブティックの招致など)、エンターテイメント、不動産分譲などが展開されています。このためそれらを合計した売上規模ではマカオはラスベガスに遠く及びません。勿論、マカオが向かおうとしている方向性はラスベガス型の総合的カジノ・コンヴェンション複合都市ですから将来的にはマカオの売上構成はラスベガスに近似したものとなると予想されます。

これまでの競争、これからの競争

 最近マカオでオープンしたカジノとしてはサンズ・マカオ、ウイン・マカオ、ギャラクシー・スターワールド、グランド・リスボアなどが挙げられます。これらのカジノは概ね所期の営業成績予想を上回る成功を収めています。これらの施設は既存のカジノ地区であるマカオに立地しており、人の流れや交通インフラの面での問題はありませんでした。しかし、今後計画されているプロジェクトの大半はマカオからコーズウェイを渡ったタイパ島に位置しています。浅瀬を埋め立てた場所に新しい目抜き通り、コータイ通りが計画されています。このコータイ通りはちょうどラスベガスの旧市街に対するラスベガス通りに相当するわけです。もともと旧市街から発展したラスベガスはより空港に近く、更地の土地がふんだんにあったラスベガス通りに移ったことで大きくスケール・アップしました。

 このように、今、コータイ通りで試みられていることはラスベガスで実行されたリロケーションと共通する点が多いのです。しかし最初にこの交通の便の悪いタイパ島に進出する業者は人の流れが増えてくるまで暫くの間、苦しい営業を強いられると思われます。現在のところ5月にオープンしたばかりのクラウン・マカオが孤軍奮闘しているわけですが今年の後半にラスベガス・サンズのベネチアンが開業すれば人の流れが変わるだろうと見られています。
各社がどういうスケジュールで設備投資するかを示したのが次のグラフです。

マカオの会社別キャパシティー計画

これを見ると現在のマーケット・シェア・リーダーであるSJMはラスベガス・サンズのベネチアンの開業とともに第一位の座から滑り落ちることがわかります。なおテーブル数(カジノの収益の柱ですから経営指標として意味があります)だけでは各社がどのくらいそれぞれのプロジェクトに力を入れているかは把握しきれません。なぜなら会社によってお金のかけ方がかなり違うからです。

 一番豪勢なラスベガス・サンズの場合、設備投資額をギャンブリング・テーブル数で割った「テーブル当たり初期投資額」は328万USドルです。一番予算をかけていないギャラクシー・メガ・リゾートの場合は155万USドルです。つまりラスベガス・サンズの方が施設に倍以上のお金をかけているわけです。ラスベガスとマカオのカジノを比較するとマカオの方がギャンブリング・テーブル当たりの生産性が高いことは昔から指摘されてきました。これはマカオがハイ・ローラーと呼ばれる玄人っぽい客筋を主に相手に商売してきたことと関係があります。カジノのライセンスが独占的に付与されており、競争が無い環境下ではこういう大口顧客相手の商売の方がマージンも高く、旨味があります。

 しかしそれでは需要の裾野は広がりません。マカオ特別行政区政府が目指しているのは明るいイメージのマス・マーケットです。資本力で圧倒的なアメリカのカジノ業者を次々に招き入れたことはマカオにおける競争がより設備ないしは演出に力点を置いた「軍拡競争」時代に突入することを意味します。したがって当面のリスクとしては2007年~2009年にかけて加速度的に増加する各社のキャパシティーにちゃんと需要が追いつくのか?という点です。下のグラフはマカオ全体の設備別の投資計画を示したものですが比較的初期投下資本の少なくて済むVIPテーブルの増加量に比べて一般テーブルやスロットの増加量の方が多いことが目をひきます。これは今後マカオで競争してゆくには莫大な資本を動員でき、しかもそういう大金を投入して建設したアトラクションがちゃんと魅力ある、高品質のものに仕上がるかどうか?というエクセキューション(実行)力が問われることを示唆しているのです。

マカオのキャパシティー予想





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最終更新日  2007年06月05日 17時59分18秒


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