風狂夜話2

風狂夜話2

2008年11月02日
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カテゴリ: 趣味


しかもお世辞に対して人一倍贅沢な嗜好をもっている人だと思ってよろしい。

これも三島由紀夫氏の優雅な口吻です。

おそらくご自身がうるさいほどのお世辞に囲まれてきたので、ここは素人を

感情教育しないといかんと思われたのでしょう。

俺にお世辞をいうときも、もっと洗練されたテクニックを弄してもらいたい

という贅言でもあります。

三島は「森鴎外」論で以下のように述べています。

「たいていの軟文学を頭からバカにしている人たち、世間で実際的な職業に



いる人たちでさえ、鴎外だけは別格に扱って、尊敬していた。いわば鴎外は

明治以来の山の手知識階級の知的アイドルであった」と。

軍医総監までのぼり、明治の貴顕紳士と対等の立場にあった鴎外の経歴に、

三島自身の憧れとコンプレックスをにじませています。

「私事で恐縮だが、先般も私の『宴のあと』という小説が故有田八郎氏によ

って訴えられた法廷で、有田氏は、『人をモデルにすると言っても、鴎外・漱石

ほどの作家ならともかく、そこらの三文文士が……』と公言されたほどである」

とへりくだっています。

有田氏も三島の文名がよもやノーベル賞クラスであることなど知る由もないのですが。

さてお世辞の件であるが、三島は以下の例をあげてその効用を知らしめています。

お世辞の秘訣は、連戦連勝の将軍にむかって、



「将軍、あなたのお髭はなんて美しいんでしょう」と言うことだ、とフランス人は教えて

います。

ひとつのことに褒められ飽きた人間は、別のことで人にほめられたくてうずうずしている

のです。大政治家や実業家は、自分の政治的手腕や才能をほめられるより、サボテンの栽培

の巧いことや、ネクタイの趣味のいいこと、小唄の巧いことをほめられたがる。



頭をピシャリと叩くことも平気でやる代わりに、抜け目なく、女の目から見た一人の男と

して、かれをみとめるフリをします。

さて三島のすごいところは、お追従を並べて利得を得る人間も、これまた人生の一面しか

知りませんと喝破している事です。ドン・ファンが年中女性を口説いていても、女性の

醜さを知り尽くしたリアリストとは限らない。甘っちょろい夢想家である場合が大半です。

本当の絶対不誠実な凄い空お世辞を言えるのは、やはり一種の悪魔的天才でありますと断ず

る。





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最終更新日  2008年11月02日 09時46分00秒
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