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ジャージレッド @ ウラコさんへ あとで携帯にメールします。 ではよろし…
ウラコ@ お久しぶり。。。  ジャージRさん、元気ですか?携帯に…
hero@ はじめまして こんにちわ、妖精的日常生活楽しませても…
BBS@ 最高~! 早く次が読みたいです!
tukiyori @ Re:03 魔法少女♪奈里佳・番外編(12/12) ここまで読ませていただきました♪ これか…

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「だから何度言われても私はそんなことをするつもりはないって言ったでしょ!」
 今朝着てきた私服のオレンジ色のワンピースに着替えてからミィーティングルームに戻って来たワタシの耳に飛び込んできたのは、詩衣那さんのちょっと不機嫌そうな怒鳴り声だった。もっとも妖精の声だからキンキンと高く響く迫力のない声だったけど。
「しかしだねえ詩衣那君、これは個人的な頼みというわけではなくて、会社のため、加賀グループ全体のためなんだよ」
 激しい身振り手振りをしながら目の前を飛び回る詩衣那さんに押されて、防戦一方という感じの剣持主任。左のこめかみから頬にかけて、たらりと一筋の冷や汗を流している。やっぱり剣持主任っていざとなると詩衣那さんには頭が上がらないんだ。
「あら、美姫さんおかえりなさい。そのワンピース、よく似合っていてかわいいわよ」
 ふたりの言い争いを横目に、仁村さんがのんびりした口調でワタシの衣装をほめる。まあ、かわいいと言われて悪い気はしない。すでにもう『俺は男だ!』なんて言う気はさらさらないし。妖精少女であることを受け入れないことにはこれから先の人生が前に進まないんだもん。
「なんだかもめてるみたいですけど、さっきからいったい何の話なんですか?」
 ワタシはテーブルの上に置いてある本来のワタシの席には戻らずに仁村さんの左肩に舞い降りると、周りには聞こえないような小さな声で話しかけた。ああ、それにしてもいつものエプロンドレスとかメイド服と違って、ワンピースって楽♪
「簡単に言えば、今度の新製品を宣伝するための特別番組を放送する予定なの。それに詩衣那さんも出演することになっているんだけど、未だに嫌がっているのよ。収録予定はもう来週になってるのに」

「新製品って、あれのことですか?」
 詩衣那さんは剣持主任の顔の周りを飛び回り、時には蹴りを入れたりしながら、『出ないって言ってるでしょ!』と、繰り返し言っている。剣持主任は主任で、『今回一回限りだから』と、詩衣那さんに頼み込んでいる。そんな様子を見ながらワタシは仁村さんに問いかけた。それにしても大人って大変だなあ。いわゆる会社の事情ってやつなんだろうな。
「そう、あれ。美姫さんの想像通り妖精用電波ガード1号・まもるくんのことよ。美姫さんのところには確か試作品があるはずだけど、製品版はもう出荷を待つだけの状態なの。今月末には発売出来るはずよ」
 とりたてて秘密めかすでもなく普通の口調で話す仁村さん。一瞬、部外者のワタシにそんなことを教えても大丈夫なのかなと思ったけど、よく考えるまでもなく既にワタシはどっぷりと関係者だった。う~ん、なんだか実感がわかない。
「試作品と製品版ってどう違うんですか?」
 詩衣那さんと仁村さんの攻防は終わりそうにないので、ワタシとしても仁村さんの話に付き合うしかない。
「性能的には何も差はないわ。でも見た目が大違いかしらね。試作品では適当な箱に納めてあるけど、製品版ではちゃんとしたデザイナーさんにデザインしてもらったケースに入っているってことかしら。ほら、やっぱり売るとなると見た目って大事でしょ?」
 ある意味、パッケージだけ変えてみました♪ ということに等しい発言をする仁村さん。大人って……。
「中身とかは変えなかったんですか? ほら、普通は性能は落とさずにワンチップ化して部品点数を減らすとかして信頼性を上げたりするんじゃないかと思うんですけど」
 昔読んだゲーム雑誌に書いてあった廉価版のゲーム機械のレビュー記事を思い出しながらワタシは仁村さんに訊いてみた。そういえば【妖精用電波ガード1号・まもるくん】を使えば、妖精でもTVゲームで遊べるんだろうか? 帰ったら試してみないといけないね。
「よく知ってるわね。でも、あれに関しては話は別よ。だって私たちは、『どう回路をいじれば良いのかっていうことを論理的に理解しているわけじゃない』からやりたくても出来ないのよ」

「改良するにも適当に回路を組み替え直してテストしてみるしかないんですね。なんだかもっときちんとした研究を想像していたんですけど、すべて行き当たりばったりなんですね」
 改めて口にするとため息が出そうな現状かもしれない。
「あら、何かを新しく開発しようっていうような研究はどこも似たようなものよ。良い例が新薬の開発ね。ある病気の治療に対してどんな物質がどの程度の効果があるかだなんてことは、実際に試してみないと分からないでしょ? 新薬の開発っていうのはある意味、行き当たりばったりそのものと言えるんじゃないかしら。そうじゃなきゃモルモットなんて存在がいるわけないでしょ? まあ私も医薬品に関しては素人だからそういうイメージってところなんだけど」
 にこやかに身も蓋もないことを言う仁村さん。まあ確かに言われてみればそうかもしれないけど……。
「なるほど、ワタシはモルモットというわけなんですね」

「や、やあねえ。美姫さんがモルモットだなんて思ってなんかいないわよ。たとえ実質はそうだとしてもね」
 ちょっと慌てているのか口調が早くなって来ている。ほほう、仁村さんはいつも冷静沈着な表情しか見せないかと思っていたけどそうでもないのね。メモメモ♪ それにしても本音が出ちゃってますよ。仁村さん。
「やっぱり実質はそうなんだ……」
 仁村さんってば嘘をつけない人なんだろうなあ。というわけでワタシは仁村さんが漏らした『実質』という言葉尻をとらえて、さらに落ち込んでみせる。何度も言うけど演技だよ。
「だからそうじゃなくて……」
 ちょっと焦ってるみたい。ほほう、もうちょっと遊んじゃおうかな? しかしそれは計画段階に入る前に、既に崩れてしまったのだった。
「ゴホン、あ~、ちょっと良いかな?」
 これは剣持主任? ワタシは落ち込みの演技をすぐに止めると、声のしたほうに向き直った。するとさっきまで言い争っていたはずの詩衣那さんと剣持主任がこれ以上はないというにこやかな顔をして、ワタシを見ていたのだった。いったい何事?
「はい、何ですか?」
 一瞬で落ち込みの演技をやめると、ウェイトレスので鍛えた笑顔を浮かべて返事をする。はいはい、お遊びはお終い~。
「もう、美姫さんってば騙したわね」
 ちょっとだけムッとした表情を作りながら、ワタシの額を人差し指でトンとつつく仁村さん。
「それはそうと、いつの間にか話がまとまっていたんですね」
 ワタシは仁村さんのことを意図的に無視すると、詩衣那さんと仁村さんのふたりに気軽に問いかけた。そう気軽に……。
「ん~、美姫さんが想像しているようにはまとまったわけじゃないんだけど。ね、剣持さん♪」
 ここにきて初めて見るような甘い雰囲気で剣持主任に話しかける詩衣那さん。紫色の蝶の羽をゆっくりと羽ばたかせながら剣持主任の顔のあたりで舞っている。なんだからぶらぶ? まさかね、さっきまであんなだったのに。
「ああ、結局のところ、新製品の宣伝番組に出る妖精は、詩衣那君じゃ無くてもいいってことに気がついてね」
 にこやかに言う剣持主任。え~と、それってつまり……、どういうこと?
「幸いなことにうちの研究所には私以外にも妖精の職員がいるし。というわけで、美姫さん。あなたテレビに出なさい」
 ワタシよりもやや高い位置で浮かんでいる詩衣那さんが、ワタシを見下ろしながら宣言する。
「でも、職員って言っても、今日ここに来たばかりのワタシに【まもるくん】の宣伝番組をうまくやることなんか出来るわけないじゃないですか。ダメですよ。やっぱり」
 当然のように抗議する。ワタシだってテレビに出られるかもと思うと悪い気はしない。でもそれとこれとは別問題だ。ワタシは両手で大きく『×』を作ってみせた。
「出来ればやるのかね?」
 しかしその程度のことは織り込み済みなのか、剣持主任は冷静にワタシの内心を読んだかのようなポイントを突いた質問をしてくる。思わずこくりと小さくうなづくワタシ。自分の感情に素直なこの身体が憎い。
「ま、まあ出来れば、その、やらなくもないかな~♪ という感じですが。でも出来ないですよ」
 確かに出来ればテレビにも出てみたいけど、ちょっとそれは無理な感じ。だって本当に何を話せばいいのか分からないんだもの。
「じゃあ、これから一週間の間に【妖精用電波ガード1号・まもるくん】のことは開発中の裏話まで含めてみっちり教えてあげるから、私の代わりにテレビに出てよ。剣持さんも特別ボーナスを出すって言ってるからさ♪」
 剣持主任に対して軽く目配せをする詩衣那さん。そして大きくうなずく剣持主任。なんだか罠にはめられたような気がしなくもない。
 ともあれ結論から言うと、詩衣那さんと剣持主任、そして最後は仁村さんが加わっての説得にワタシは負けてしまったのだった。こうしてワタシのテレビ出演はなし崩し的に決まったのだった。……良かったのかな。これで?





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Last updated  Jan 16, 2006 11:31:21 PM
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