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ジャージレッド @ ウラコさんへ あとで携帯にメールします。 ではよろし…
ウラコ@ お久しぶり。。。  ジャージRさん、元気ですか?携帯に…
hero@ はじめまして こんにちわ、妖精的日常生活楽しませても…
BBS@ 最高~! 早く次が読みたいです!
tukiyori @ Re:03 魔法少女♪奈里佳・番外編(12/12) ここまで読ませていただきました♪ これか…

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第三章

「はじめまして。本日はお越しいただきましてありがとうございます。司会の坂牧深雪です」
 改めて自己紹介をする坂牧深雪ちゃん。まずはワタシのほうに対面すると握手を求めてきた。白くて小さくて柔らかそうな右手が差し出される。ちなみに握り返すワタシの手は、坂牧深雪ちゃんの手よりも白くて小さくて柔らかだったが、だからどうだということを考えられるような状態ではもちろんなかった。
 今時の高校生らしく、『出られるものならテレビに出ても良いかな?』なんて軽く考えてた面もあったけど、いざ本番でいつもテレビの中でしか会ったことがない坂牧深雪ちゃんを目の前にすると、緊張でガチガチになってしまう。こんなはずじゃなかったのに~。
「はじめまして。加賀重工開発部主任の剣持です」
 無難に挨拶をする剣持主任。いつもと違って場違いな白衣は脱いでいる。さらに夏場には定着して久しいノーネクタイのクールビズファッションだ。オタクらしからぬ痩身の持ち主だからテレビに映った姿だけで判断すると、そこそこ優秀な研究者に見えないこともないかもしれない。中身は見た目とぜんぜん違うけど。
「は、はじめまして。加賀重工開発部の長谷川美姫です」
 緊張で口の中が乾燥しているからか、言葉の出だしがうまく出ない。確かにワタシは加賀重工で働いていることに間違いはないのだけれど、実のところまだ一週間にもならないキャリアしかないのだ。しかも正社員ですらないのだ。
 本来ならこの場には実際に【妖精用電波ガード1号・まもるくん】の開発に携わった詩衣那さんが出るのがふさわしいのだけれど、本人が死んでもテレビには出たくないということなので、代わりにワタシが出ることになったのだ。やはり番組の構成上、会社側の出演者の中に妖精がいないことには絵にならないらしい。

 というわけで、ワタシは加賀重工におけるキャリアが一週間にも満たないにもかかわらず、さもこの件に関してはすべてを知っているベテランのふりをしなくてはいけない役どころなのだ。その為にも詩衣那さんや剣持主任からはこの数日の間にみっちりと【妖精用電波ガード1号・まもるくん】の開発時における様々なエピソードを教えてもらって来てはいるけど……、うまくいくのかやっぱりちょっと不安かも?
「さて、さっそくですが美姫さんも妖精になってからは、パソコンや携帯電話には苦労されたのではありませんか?」
 あらかじめ渡されていた台本通りの質問だ。坂牧深雪ちゃんもいきなりアドリブでくるようなことをするつもりはないらしい。
「ええ、話には聞いていましたが、まさか起動中のパソコンの側に行くと気絶しちゃう程の悪影響が出るだなんてことが本当にあるとは思いませんでした。あと携帯電話の悪影響はパソコン程強くはないですが、人混みの中では避けようがないってことが問題ですね」
 剣持主任をバックにしてワタシと坂牧深雪ちゃんが接近して話している様子を下から斜め上に見上げるようなアングルで撮影しているカメラに気を取られながらも、ワタシは極力にこやかな笑顔を浮かべながら質問に答えた。とにかくスマイル、スマイル!
「ということは実際にパソコンの悪影響で気絶したことがあるわけですね?」
 坂牧深雪ちゃんは驚いたという顔をしてワタシに質問をしてきたが、台本に書かれてある流れに沿っての話なので、本当に驚いているわけではない。しかしそこはさすがにプロと言うべきか、まったく棒読み的なところがなくて、感情のこもった驚き方をしているのはすごいと思う。
「召喚されて妖精になったその日に、パソコンで妖精用の服とか小物とかの値段を調べようとしたら完全に気絶しちゃって、それも家族の目の前でしたから、かなり心配かけちゃいました」
 一応ワタシは、【妖精用電波ガード1号・まもるくん】の開発に当初から携わっていたという設定になっているので、妖精に召喚された時期を特定させるような発言はしないように気をつけてしゃべらないといけない。なんというか、ちょっと大変。ともかく身体がバラバラになりそうな感覚だったとか、今思い出しても嫌な記憶について、ワタシは坂牧深雪ちゃんに聞かれるままに答えるのだった。
「なるほど、美姫さんもいろいろと経験されたんですね。実はというか当然ですけど私も、パソコンの悪影響には苦労しました。今はもう妖精はパソコンや携帯電話に弱いということが世間でも浸透してきましたから良いですけど、数年前はまだそういう常識がありませんでしたからね」
 深刻な話なのは間違いないのに、それを感じさせない明るい笑顔。さすがに芸能人というかアイドルというか。坂牧深雪ちゃんってすごい。というか話は変わるけど、彼女はいったい何歳なんだろう。妖精オタクで坂牧深雪ちゃんの公式ファンクラブにも入っているらしい我が弟の幸也も知らなかったし、もしかして本当はかなりお年を召しているのだろうか?

 実は今回、ワタシがテレビに出るにあたって加賀重工側のスタッフから言われたことがある。『妖精であるが故の不幸を絶対に売り物にするな!』ということだ。自分で言うのもなんだけど、大多数の妖精は確かにかわいい。ちっちゃくてふわふわでぽにぽにでごく普通の人間の保護欲を刺激しまくりらしいし、何よりも人形やフィギアと違って自分で動くし意志もある。まあ当たり前なんだけど。
 ともかくそんなかわいい妖精が、パソコンや携帯電話の悪影響によって人間社会における活動が阻害されているという不幸(?)を嘆きつつ一般人の同情を買おうとすれば、普通の人間はもちろん、妖精のことをかわいらしい存在、保護すべき存在とみなす人たちは、争うように同情を安く売ってくれるだろうことは間違いない。
 しかしそれではダメなんだそうだ。同情を買うだけの存在に甘んじれば、妖精はいつまで経っても人間社会において自立できないままでいるしかないことになるということらしい。
 別に高尚な理想を持ち出しているわけではない。つまり単純に、不幸を売り物にする為には不幸である状態が維持され続けないといけないということで、世の中の妖精と妖精のまわりにいる人間達がそういう考えばかりでは、妖精の不幸な現状を改善する為のものである【妖精用電波ガード1号・まもるくん】が売れないかもしれない。『それじゃ儲からないじゃないか!』ということらしい。
 現実問題として日本中のすべての妖精達自身が【まもるくん】購入したとしても、販売額はたいしたものにはならないのは目に見えている。真の顧客層は、は妖精を雇用して新しいビジネスを起こそうと考える企業だったり、あるいは純粋に妖精のことを思って妖精が過ごしやすい環境と作る為に【まもるくん】を購入するだろう一般人だということなのだ。

「ははあ、なるほど。美姫さんのまわりは良い人ばかりだったんですね」
 しみじみとした口調でうなずきながらワタシを見つめる坂牧深雪ちゃんの目のには、なにやらワタシをうらやむような色があった。やっぱり苦労していたんだね。
「ええ、まあそうですね」
 一瞬、守銭奴で色魔なコウモリ羽の妖精、海斗の顔が脳裏に浮かんだワタシは、ちょとだけ顔の筋肉を引きつらせながら曖昧な返事をするのだった。常ににこやかでいようと思っていたけど、しょうがないじゃない。ねえ。
「さて、その中でもやはり力になったのは、今日ご紹介する【妖精用電波ガード1号・まもるくん】を開発された剣持道彦さんでしょうね」
 坂牧深雪ちゃんのその言葉とともに、ワタシ達を撮っていたカメラから、剣持主任を撮っていたカメラに切り替わったのか、カメラには写らない場所にあるモニターに剣持主任の姿が映るのが見えた。おお、これからが番組の本番だね。ううう、とにかく失敗しないようにがんばらなきゃ。





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Last updated  Feb 2, 2006 09:43:12 PM
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