不良中年・天国と地獄

不良中年・天国と地獄

2010年04月26日
XML
カテゴリ: DVD

世界最強の国と言えばアメリカ合衆国。政治・経済・軍事力など、どれも敵う国はありません、と少なくと20世紀までは言い切れました。

しかし、21世紀のこんにち、そうは断言できないでしょう。アメリカの覇権は揺らいでいます。その象徴が、 自動車産業の衰退 でしょうか。

制作=2008年 アメリカ映画 ワーナー・ブラザース映画配給 117分。監督=クリント・イーストウッド。出演=クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー、コリー・ハードリクト、ブライアン・ヘーリーほか

妻に先立たれ、息子たちとも疎遠なウォルト( クリント・イーストウッド )は、自動車工の仕事を引退して以来、孤独な生活を送っていました。ある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ( ビー・ヴァン )と知り合います。二人に親子のような絆が生まれ、タオの家族ともつきあいがはじまりました。

主人公は 朝鮮戦争 に従軍しました。戦場では二桁の人間を殺しています。それが絶えず彼を苦しめていました。彼の偏屈な性格は、どうやら戦争体験に由来しているようです。唯一の理解者だった妻に先立たれ、孤独感はいっそう深まります。

息子たちは父親を施設に入れようとしますが、彼はそれを拒否。毎日ビールを飲み、ビーフジャーキーをかじりながら、デッキチェアに座り、愛車を眺めてフォードで働いていた頃を懐かしんでいます。

自動車産業の城下町だったウォルトの街から、白人たちが少なくなって行きます。代わりに東洋系の人間が越してきて、街の秩序を乱します。考え方も生活習慣も違う異国の住民たち。頑固な老人が馴染めるわけがありません。

なぜ彼らはアメリカへ来たのか。ベトナム戦争で米国に協力した彼らは、勝者になった共産軍の報復を恐れて国を捨てたのでした。彼らの移住にも戦争が関係しているのでした。巧みな設定です。

主人公と移民の交流は、型通りの展開で、特に斬新なところはありません。ややご都合主義でもあります。ビーフジャーキーばかり食べている主人公が、アジアの温かい家庭料理に惹かれるのはわかりますが。

白人と仲良くすることでアジアン社会から孤立した隣人。当然、摩擦が起こります。ここからの顛末は、書かないほうがいいでしょう。 ラストの行動は賛否が別れる ところですが、小生は納得できました。

淡々とした展開、抑制された感情表現。それだけに、見終わったあとの感動は身に沁みました。傑作として推すことにやぶさかではありません。 俳優としてはイーストウッドの最後の作品 らしいので、見ておくことをお薦めします。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010年04月26日 14時41分59秒
コメント(0) | コメントを書く
[DVD] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

カレンダー

プロフィール

中年ジュリー

中年ジュリー

カテゴリ

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

背番号のないエース0829 @ Re:レコード大賞最優秀新人賞 岡田有希子「十月の人魚」に、上記の内容…
マイコ3703 @ 実は更新の度に見てました(笑) ブログの隅から隅まで読んでしまいました(…
kenngu0310 @ Re:エルメス バッグ 新作 2013 秋冬 突然訪問して失礼しました。 ありがとうご…
中年ジュリー @ Re[1]:ブルーレイレコーダー(10/10) GAMMAさん 二度の書き込み、ありがとうご…
GAMMA@ Re:ブルーレイレコーダー(10/10) 上記(下記かもしれませんが)2番目のアドレ…

バックナンバー

2025年11月
2025年10月
2025年09月
2025年08月
2025年07月
2025年06月
2025年05月
2025年04月
2025年03月
2025年02月

© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: