世界最強の国と言えばアメリカ合衆国。政治・経済・軍事力など、どれも敵う国はありません、と少なくと20世紀までは言い切れました。
しかし、21世紀のこんにち、そうは断言できないでしょう。アメリカの覇権は揺らいでいます。その象徴が、 自動車産業の衰退 でしょうか。
制作=2008年 アメリカ映画 ワーナー・ブラザース映画配給 117分。監督=クリント・イーストウッド。出演=クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー、コリー・ハードリクト、ブライアン・ヘーリーほか
妻に先立たれ、息子たちとも疎遠なウォルト( クリント・イーストウッド )は、自動車工の仕事を引退して以来、孤独な生活を送っていました。ある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ( ビー・ヴァン )と知り合います。二人に親子のような絆が生まれ、タオの家族ともつきあいがはじまりました。
主人公は 朝鮮戦争 に従軍しました。戦場では二桁の人間を殺しています。それが絶えず彼を苦しめていました。彼の偏屈な性格は、どうやら戦争体験に由来しているようです。唯一の理解者だった妻に先立たれ、孤独感はいっそう深まります。
息子たちは父親を施設に入れようとしますが、彼はそれを拒否。毎日ビールを飲み、ビーフジャーキーをかじりながら、デッキチェアに座り、愛車を眺めてフォードで働いていた頃を懐かしんでいます。
自動車産業の城下町だったウォルトの街から、白人たちが少なくなって行きます。代わりに東洋系の人間が越してきて、街の秩序を乱します。考え方も生活習慣も違う異国の住民たち。頑固な老人が馴染めるわけがありません。
なぜ彼らはアメリカへ来たのか。ベトナム戦争で米国に協力した彼らは、勝者になった共産軍の報復を恐れて国を捨てたのでした。彼らの移住にも戦争が関係しているのでした。巧みな設定です。
主人公と移民の交流は、型通りの展開で、特に斬新なところはありません。ややご都合主義でもあります。ビーフジャーキーばかり食べている主人公が、アジアの温かい家庭料理に惹かれるのはわかりますが。
白人と仲良くすることでアジアン社会から孤立した隣人。当然、摩擦が起こります。ここからの顛末は、書かないほうがいいでしょう。 ラストの行動は賛否が別れる ところですが、小生は納得できました。
淡々とした展開、抑制された感情表現。それだけに、見終わったあとの感動は身に沁みました。傑作として推すことにやぶさかではありません。 俳優としてはイーストウッドの最後の作品 らしいので、見ておくことをお薦めします。
DVD「誘拐の掟」 2016年05月28日
DVDスターウォーズ6「ジェダイの帰還」 2016年01月06日
スターウォーズ5「帝国の逆襲」 2016年01月05日
PR
カレンダー
キーワードサーチ
コメント新着