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2006年08月27日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
先週は何かロクでもないニュースを見てしまってブルーになりました。

↓父親が生後5ヶ月の乳児を70℃の熱湯で虐待
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060822-00000216-yom-soci

ちょっと酷すぎますね。鬼畜です。しかも目的は障害児福祉手当を受給しようとしたかららしいのですが、それなら何故産んだ?って感じです。乳児は足の指8本壊死する大けがで、将来的にも歩行は困難だそうです。なんだそれ・・・

暴力団さんはそんなにお金に困ってるんですかね?我が子を金稼ぎの道具に使うとは。過去に犬の足を切断して、街行く人からその犬への寄付金を騙し取っていた人がいましたが、やる事が異常です。正気の沙汰とは思えません。なんだかなー。

実は私は子供の生殺与奪の権を親が握っていても良いと思っています。例えば息子の家庭内暴力に耐えきれなくなって息子を殺したという親は無罪でも良いと思っています。自分が産んで育て方を間違ってしまったのであれば、一種の失敗作として自分で後始末つけるというのはアリだと思っています。危険な考えかも知れませんが。

しかし今回のは事情が違います。まだ何もできない生後5ヶ月の赤ちゃんです。しかも場合によると生きていく方が余計に苦しいかも知れません。障害を背負い、その障害を故意に作ったのは実の親なのですから。全く救いようがありません。

と思ったら他にもこんなニュースやあんなニュースが。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060824-00000032-mai-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060826-00000037-nnp-kyu

加えてシュレッダーやらエレベーターやら・・・もう止めて、そんなニュース。何か聞いて痛いわー(T△T)見なきゃ良かった。風邪で弱っているのと相まって全身の力が抜けていきます。




※この作品はフィクションであり、実在する、人物・施設・団体とは一切関係ありません。


正義のみかた

第八章 白い光に照らされて

それから画面には先程見てきた若葉邸がモザイクに囲まれて映し出された。傍らに立つリポーターが閑静な住宅街に起きた突然の惨劇を強調する。近隣住民の同情の声や不安の声がそれに続く。その後画面は更に切り替わり若葉和明氏の会見の模様を映し出していた。

「・・・私はこの犯人を許すことはできません。できるなら私の手で殺してやりたい。しかし彼を死刑にする事もできません。無念です。夫として、父親として私ができることは何も残されていないのです。墓前に何と報告すればいいのか・・・」

時折言葉を詰まらせながらコメントを言い終えた若葉さんは俯き、ポケットからハンカチを取り出して目頭に当てた。その瞬間マスコミという名のモンスターは容赦なく悲劇の主人公にフラッシュの爪を突き立てる。この瞬間を逃すまいとシャッター音が連続して鳴り響く。7年たってもこの国は何も変わらない。犯罪もマスコミも・・・

その後若葉幸恵さんのご両親のコメントが玄関口で取材されていた。インターホン越しに沈痛な声を投げかける父親。突然娘を亡くしたご両親の心中は推して知るべし。国民の知る権利という名の下に行われる彼らの攻勢は事件当事者に対する遠慮というものを知らない。

洋子のご両親へ凶報を知らせるために電話した時の事を思い出す。電話口に出たお母さんには最初あまりの突然の出来事に「あのー、何をおっしゃられているのかわかりませんが・・・」と言われてしまった。冗談だととられたのか気が動転してしまったのか。その両方であったように思われる。

その後電話口に代わったお父さんにも同じ説明を繰り返した。ご両親にはとるものとらずすぐ駆けつけて来ていただいたが、三人ともほとんど会話らしい会話もせず、現場で警察の状況説明にただ呆然としていた。やがてお母さんは堰を切ったように泣き崩れ、気分が悪くなったということで近くにホテルを用意した・・・

画面はスタジオに戻り、元警視庁捜査部長や犯罪心理学の大学教授といった肩書きを持つ人たちが当たり障りのないコメントを続けている。そしてそれが一段落すると今度は私の話題へと移った。つまり同じ事件の被害者である私がどういった弁護活動を繰り広げるのか、大いに興味があるらしい。番組の構成上、私の存在はスパイスとして大いに役立っているようだ。

今回の事件、本来ならワイドショー的には最近多発している少年事件の一つとして「その他大勢」の中に埋没してしまうはずであった。旬であるのは視聴率がとれる数日間のみ。それも翌日にでも大物芸能人のスキャンダルが舞い込んでくれば使い捨てられてしまうような。そこを図らずも脚色する形になってしまったのが私自身の存在だ。国民の関心を引くのに一役買ってしまった。予想はしていたのだが。

番組で今度は私の事件の解説が始まろうとしていた。7年前のVTRを倉庫から引っ張り出してきたのだろう、当時の私の記者会見の映像が流れ始めた。所員の誰かが気まずさからテレビのスイッチを消した。それを合図に皆蜘蛛の子を散らすように仕事に戻っていった。私も彼らの気遣いに合わせてさりげなく仕事に戻る。



「真実」とは難しい。この仕事をやっていて毎回そう思う。そして未だに時々わからなくなる事がある。事件の真実を探るのは警察の役目だ。その真実を元に裁くのが司法の役目。その間に介在する弁護士の役目とは一体何か?法的に守られて皆が等しく持っている権利を守るのが役目だ。そこに真実は必要か?勿論無実の人間が冤罪によって罰せられようとされている時に真実は必要だ。

しかし既に真実がはっきりしている場合、例えば嘘をついてしまった、人を傷つけてしまった、人を殺してしまった、そういう「真実」が確定してしまっている場合、我々の仕事は何なのだろう?最悪「彼に殺意はなかった」「首謀者の口車に乗せられて仕方なくやった」「偶然が呼んだ不運な出来事なのだ」・・・そういう「言い訳」を塗り固め、少しでも量刑を軽くしようとする。そこに正義はあるのだろうか?

確かに求刑が被告にとって重すぎたり、過去の判例からいって不平等に感じられる場合にバランスをとる役目として我々弁護士の存在意義はある。だがそれで誰を救えるのだろう?誰のため?誰に感謝されるというのだろう?

弁護士仲間の内には割り切っている者、同じ悩みを抱えている者、それぞれいる。当然といえば当然か。各々自分自身を納得させる事ができる一定水準の「倫理」「使命感」「プロ意識」を持ち合わせ、それらが総合的にバランスの取れた均衡点で妥協し、割り切ってやっているのだろう。私も割り切った方がやり易いと承知している。しかし自分の事件後、その境界線は更に輪郭がぼやけてしまった。

振り返ってみると今回引受けた敦君の一件では、私は自身を客観視するという目的の下、必要以上に「倫理」よりも「使命感」「プロ意識」を重視するよう意識していた。そうする事で自分の「弁護士としての適正」を再確認するように・・・


心配そうに秋月君が私の顔を覗き込む。不意のアップに少しに驚いた私は体をビクッとさせて
「い、いや、少し考え事をしていただけさ」
どうやら相当難しそうな顔をしていたようだ。
「眉間に寄った皺が揚げ出し豆腐みたいでしたよ」
今日も彼女は「絶口調」のようである。





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Last updated  2006年08月27日 15時40分38秒
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