『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』100万部?日記

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』100万部?日記

2011.08.02
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カテゴリ: 歴史の話
(昨日のつづき)


実際、平泉には宋の文物がたくさんありました。

また遠く中国(宋)のお寺とのやり取りがあった記録もあります。

日本海ルートで博多と並ぶ玄関口だった敦賀に向かい、

そこから宋と直接貿易をしていたという説もあります。



しかし、それはなかったと思います。

奥州藤原氏は、 物理的に海外との直接取引はムリだった と思われるのです。



たとえば、津軽の十三湊は鎌倉・室町時代には北の玄関口として栄え、



と名乗るぐらいに権勢を誇りました。

ただ、十三湊の発掘調査によると、本格的に機能し始めたのが13世紀頭ということなので、

奥州藤原氏は十三湊をあまり活用できなかったように思えます。



改めて思い返すと、平泉の位置は、当時の東北の中心地だった奥六郡の南端に位置しますが、

もっと広い視点で見ると、 東北の入口である「白河関」

蝦夷への入口である青森の「外が浜」 (青森県津軽半島東部の陸奥湾沿岸)

を結ぶ 「奥大道」 (初代・藤原清衡が整備した幹線道路)のちょうど中間に位置します。

つまり、陸路の中心地です。



平泉から南へは北上川を下って、石巻に出るという海路もありますが、





奥州藤原氏の経済政策は、 安全度の高い陸路 を中心とした交易が中心であり、

宋などの海外との直接貿易は念頭になかったのです。


(京商人・博多商人を通しての宋との貿易はあったかもしれませんが、

これらの商人を活用する時点で平家の影響を受けないわけにはいきません)




より安全な陸路を選ぶのは当然と言えば当然でしょう。



こういった話をすると、古く飛鳥時代に阿倍比羅夫が658年から3年間日本海側を

北に航海して蝦夷を服属させ、粛慎(樺太)と交戦したじゃないか。

つまり、日本海ルートは随分と昔からあって、敦賀や博多までは直接行けたのではないか、

という反論もあると思います。

しかし、時代が違うとはいえ、同じ海路でも

軍事ルートと商業ルートとでは大きく異なります。


軍事ルートは1度きりでも構いませんが、

商業ルートは定期的・安定的に安全が確保されていなければ、

使うことができません。

沿岸各地の港の整備、船の技術の向上、そして、商船にとっては海賊に対する治安維持が

確保されていなければ、とてもじゃないですが交易はできません。

沿岸伝いではなく、大きく沖を航海しようにも、常に南から北へと対馬海流が流れているため、

北上は良くても南下は難しかったと思われます。



実際に源義経も奥州に逃げるために、日本海沿岸沿いを陸路を使っています。

海路が発達していれば、安宅の関などで苦労をしなくても良かったかもしれません。



よって、奥州藤原氏の時代はまだ 日本海ルートは活発ではなかった と思われます。



(そもそも平安前期に東北地方を襲った数々の大災害<830年・850年出羽地震、

 869年貞観三陸地震、そして日本史上最大の噴火である915年十和田火山大噴火>で

 それ以前に築かれた交易路が壊滅している可能性もあります。その話はまた別の機会に)



さらに言うと、博多と並ぶ玄関口だった敦賀は、12世紀中盤に一度衰退してしまいます。

対馬海流を使うと意外と近い高麗との交易がなくなったのと、清盛が瀬戸内海ルートを

整備したため、瀬戸内に比べ難破の危険が高い日本海ルートが敬遠されたものと思われます。




結果論で考えると、 奥州藤原氏の敗因の一つは陸路中心

だったせいかもしれません。

つまり、関東と北陸を敵対勢力に押さえられてしまうと、

交易を行うことができなくなるからです。


海路を使って直接京都や博多、そして宋にも行ければ、まだ鎌倉幕府とも対抗できたかも、

と夢想してしまいます。

源義経や藤原泰衡もすんなり逃げられたかもしれません。



この反省があったためか、後継者ともいえる十三湊の安藤氏は

日本海ルートによる海路を発達させたのではないでしょうか。

(安藤氏は、古代東北の主・安倍氏と奥州藤原氏の名字を取って、

 安藤と名乗ったという説もあります) 








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最終更新日  2011.08.03 01:57:38
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