2007/04/05
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カテゴリ: 人生・教訓!
先日、私が住む市内のある人形師のお宅に行ってきた。

初めての訪問だった。

人形1

この素朴な土人形を、近所の方から母が毎年頂戴していたのだが、残念ながらその方は亡くなり、十二支の人形が揃わず仕舞いになっていた。

亡くなった方は、訪問した人形師のお姉さんで、母とは親しくしていただいて、いつの間にか毎年十二支の人形やひな人形などを頂戴していたらしい。


思い立ったが吉日。

母が人形を見たいと言い出し、私は人形よりもその作り手に会ってみたいと思い伺うことにした次第。

そのお宅は古い一軒家で、人形を展示されていたのは、一軒家と屋根続きにはなっているが、失礼ながら物置小屋と言ってもおかしくはない部屋。

そして、応対していただいたのは、77歳になられる人形師御自身だった。


なぜ人形師になったのか、人形を作ろうと思ったのか、聞かせてもらいたかった。



しかし、会社は倒産。

残務整理や従業員の再就職の斡旋に動き回り、ようやく御自身の次の就職先も決まった時、体調の異変に襲われる。

新しい会社への遠慮もあり、病院へ行けずに3ヶ月が過ぎたころ下血がひどくなり、貧血で倒れて病院へ。

検査結果は直腸がん。

即入院。

食品会社では、インスタント食品の開発で年中試食していたらしく、その過多な試食が悪かったのか?。

医者に食い下がり問い質したところ、医者からは余命は3年と告げられたとか。

おまけに、手術直前に血液型がRHマイナスであることが分かり、手術は中止となる

しかし、多くの方の協力で血液が集まり、手術当日も病院へ献血に来た協力者がおられたとか。

手術は無事成功したが、今から40年近く前のこと、なんと半年の入院生活を余儀なくされる。


退院はしたが会社にはおられず、体のことを考え仕事をどうしようとか思っていた矢先、新聞の博多人形の記事が目に止まる。



それから、あちらこちらの工房を巡り、独学で人形作りを学んだ。

驚くことに全くのド素人だったのだ。


作り始めて最初の一年で120種もの人形(殆どが土鈴)を作り、翌年から民芸品店に置いてもらおうと回ったが、「そげなわけのわからんもの置けん」と断わられるばかり。

それでも一軒だけ引き取ってくれた時は、思わず涙ぐんだという。

翌年から思い切ってデパートでの実演販売を始めたが、如何せん全くの無名なので見向きもされない。



別の機会には物産展の会場で800種もの土鈴のコレクターに「これは世界中にこれだけですよ」とお墨付きを貰い、勧められて特許まで申請したとか。

これが切っ掛けで、少しずつ売れ始めて十二支やひな人形なども注文を頂けるようになり、生業としてやっていけるようになったそうだ。


「これは世界中にこれだけですよ」と言われた土鈴は吊るものではなく、幾重にもなった丸いもので手のひらの上で鳴る。

人形2


私が買った三重の土鈴。
人形4


500円貯金で買おうと思っている五重の土鈴。
人形3

40歳を過ぎてから、ド素人が独学で人形作りを学び、趣味などではなく生業にされてきたのだから、驚くばかりだ。

これは奇跡と言ってもおかしくはないだろう。

余命を宣告された人間が「『自分は生きている』という証を残したい一心」でやった結果が実を結んだのだと思う。

否、これはちょっと違うような気がする。

この方には、人形を作ることしか生きる道は残っていなかったのだ。

だからこそやり続け、漸く『自分は生きているという証』に辿り着いたのだ。


さらに驚くのは、がんが転移して左側の人工肛門を右側に移すという大手術を受けながらも、自分が今生かされていることに感謝し、人の役に立ちたいと『がんを語る会』を立ち上げ、東西に奔走し今では大きな組織となり、今でも顧問として活動を続けられている。

もう一つ驚いたのは、人工肛門を移す手術をした先生の手で、母も大腸がんの手術を受けていること。

偶然とは言え、親しみを感じてしまった。

それに加えて余計親しみを感じてしまったのは、今でも晩酌を楽しみにされていること。

これだけの大病をされていて、酒はやめられないとか(笑)。


人に酔い、酒に酔い、人生に酔う!おもしろきこともなき世をおもしろく!たった一度の人生じゃないか!


こんな生き方をしたいと思っているが、この方はこの生き方そのものを実践されている気がして、なぜか嬉しかった。

最近では、町内の神社の総代として、今年の800年祭のお世話もされているとか。

帰り際に「誰も病気のこととか構ってくれんで、こき使われますよ」と言われた笑顔が印象的だった。


それではまた。




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最終更新日  2007/04/05 08:40:34 PM
コメント(18) | コメントを書く


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Re:自分は生きているという証!(04/05)  
この方の生き様には学ばせられますね。
 可愛らしい土鈴が世に容れられる陰には血のにじむような心身のご苦労があったんですね。
 でも今はその積年の苦労も枯淡の境地の中で淡々と語られるのでしょうね。
 ポツリと語った一言の中に何かしら重いものを感じさせられるのはこういう方なのではないかと思った次第です。 (2007/04/05 10:11:56 PM)

Re:自分は生きているという証!(04/05)  
Jun127  さん
こんな素敵な土鈴を作られるなんて。
この方は、きっと 良い顔されてるんでしょうね。
私も、お会いしてみたいなぁ。

何一つ不自由ない私が、呑気に生きてちゃダメですね。
私にも、何か出来ることがあるはず・・・なんて、思ってしまった。
(2007/04/06 07:25:37 AM)

Re:自分は生きているという証!(04/05)  
豹柄928  さん
このあいだいただいた人形もこの方の作品ですか?
ならば大切にしないといけませんね。

明日はnextさんも早めにこられるみたいですから、兄貴もなるべく早めにお願いいたします(笑)。
お帰りは遅め、ってか帰らなくても良いです(爆)!! (2007/04/06 11:04:02 AM)

Re:自分は生きているという証!(04/05)  
タカ555  さん
土鈴を見たとたん、目頭が熱くなりました。
(2007/04/06 12:42:54 PM)

Re[1]:自分は生きているという証!(04/05)  
ワインレッド2001さん
>この方の生き様には学ばせられますね。
> 可愛らしい土鈴が世に容れられる陰には血のにじむような心身のご苦労があったんですね。
> でも今はその積年の苦労も枯淡の境地の中で淡々と語られるのでしょうね。
> ポツリと語った一言の中に何かしら重いものを感じさせられるのはこういう方なのではないかと思った次第です。
-----
全くその通りなんです。
なんの気負いもなく、ただ淡々と語られるものだから、余計に引き付けられるんですね。
気負ってばかりの私ですから、こんな境地になれればと思いますが、難しいでしょうね。
それこそ命懸けとも言えるご苦労をされた結果ですから、どうもがいても敵いません。

(2007/04/06 08:04:12 PM)

Re[1]:自分は生きているという証!(04/05)  
Jun127さん
>こんな素敵な土鈴を作られるなんて。
>この方は、きっと 良い顔されてるんでしょうね。
>私も、お会いしてみたいなぁ。

>何一つ不自由ない私が、呑気に生きてちゃダメですね。
>私にも、何か出来ることがあるはず・・・なんて、思ってしまった。
-----
Junさんの想像どおり、ほんといい顔をされてます。
80歳に近いのに、お年寄りという感じがしないんですね。
活き活きとしてあります。

それから、今のJunさんで十分魅力的ですよ。
それ以上になったら、東国原知事に説教でもするんじゃないか、と心配です(笑)。
呑気に生きていると思えるのは、素晴らしいことですよ!。

(2007/04/06 08:12:58 PM)

Re[1]:自分は生きているという証!(04/05)  
豹柄928さん
>このあいだいただいた人形もこの方の作品ですか?
>ならば大切にしないといけませんね。

>明日はnextさんも早めにこられるみたいですから、兄貴もなるべく早めにお願いいたします(笑)。
>お帰りは遅め、ってか帰らなくても良いです(爆)!!
-----
あの人形は、この方の作品です。
あまり高価なものではありませんので、申しわけないですが、どこかに飾っていただければ嬉しいです。

それから、明日は楽しみにしていますよ。
よろしくお願いします!。
(2007/04/06 08:17:08 PM)

Re[1]:自分は生きているという証!(04/05)  
タカ555さん
>土鈴を見たとたん、目頭が熱くなりました。
-----
なんとも言えぬ味わいがあります。
作り手の魂が宿っているような、そんな感じです。

(2007/04/06 08:21:15 PM)

私も、、  
この方の作品を欲しいと思いました。
素晴らしいです。

命を感じます。

試練を与えられた人には、、
人の心を揺り動かすモノがありますね。

私も、、そうした人生を歩んで行きたいと思いました。
ありがとうございます。

うふふ
明日は、、皆様と楽しい時間が過ごせますね。

座ったまま寝ちゃ、、ダメですよ(ニッコリ) (2007/04/06 08:47:34 PM)

Re:自分は生きているという証!(04/05)  
next0209  さん
いつになく
鍛冶屋さんのページで神妙になりました。
明日は愉しく飲りましょう。(^^)
(2007/04/06 10:19:55 PM)

ありがとうございました~♪  
昨日は、お世話になりました~楽しかったです~♪ (2007/04/08 01:09:38 PM)

Re:自分は生きているという証!(04/05)  
心が洗われるような今日のプログですね。
岩盤浴でお会いしたのは偶然ではなく必然だったのだと思います。 (2007/04/09 10:05:52 PM)

Re:自分は生きているという証!(04/05)  
 先日はお疲れさまでした。楽しかったの一言です。私が帰った後そして翌朝に、よびりんさんとどのような素晴らしい話が展開されたのか、嗚呼!悔しいばかりです。(^^)
 また、お会いしましょう。 (2007/04/10 01:08:01 AM)

お久しぶりです。  
素晴らしい記事をありがとうございます!
危機やどん底で天職に出逢う。
今、苦しんでいる方も、必ずそういう機会が来ますように。 (2007/04/12 07:32:41 AM)

Re:自分は生きているという証!(04/05)  
よびりん学校でお会いできるのを楽しみにしています(^^) (2007/04/12 09:37:11 PM)

ありがとうございました!  
忙しい中、参加ありがとうございました!
弱小起業家の敗者復活!人生逆転!私はこの狭い分野に特化した、日本一の口先評論家・講演家・作家・学者を目指します!宜しくお願いします! (2007/04/14 06:42:29 PM)

Re:自分は生きているという証!(04/05)  
yg1972  さん
昨日はお疲れ様でした。
なかなかお話する時間がありませんで…。
次回こそはと思っております。
これからもよろしくお願い致します。 (2007/04/16 12:19:05 AM)

Re:自分は生きているという証!  
ai☆ さん
きらりんさんの弟子のai☆ですo(^-^)o
先日は、よびりん学校の二次会からお世話になりましたm(__)m
鍛冶屋の息子さんは、とても面白い方で、たくさん笑わせて頂き、とても楽しく有意義な時間を過ごすことができました☆
またお会いでき、お話し出来る日を楽しみにしています。
ありがとうございました☆ (2007/04/17 12:55:37 AM)

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