劇場通いの芝居のはなし

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2019.06.22
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カテゴリ: 演出ノート(3)
夜が明けると、トビの鳴き声が聞こえます。食べられてはいけない。ブンナは土の中に身を隠します。鉄骨を組んだ二重の、下の部分におります。前面はネットにして、透けて見えるように考えました。これは最後にヘビが墜ちるとき、このネットに片足を掛けて逆さまにぶら下がると面白いと思ったからです。ですが、考えると危険ですし、うまくその動きは出来そうにないので、やめました。ですから、紗幕でも良かったと思います。

大きな羽音が近づいてきて、木のてっぺんに何かを落とします。一度、飛び去って、また別のものを運んできて、落として行きます。舞台では、二重の上にそっと上がることになります。照明は少し暗くして、何が落とされたのか、よくわからないようにしておきます。それからゆっくり明かりを入れて、それが何であるかが見えるようにします。
最初に落とされたのは、羽を折られたスズメです。これは、前の場面で出て来たスズメのうちの一羽です。もうひとつの姿は、大けがを負って嘴が裂けてしまったモズでした。モスは乱暴というよりも、キリッとした感じが欲しいので、スタイリッシュにしました。公民館でやったときには、ナチス風の軍帽を被らせてみました。

ここはトビが、獲物を一時、生きたまま保管しておく場所だったのです。
スズメはモズを恐れ、食べないでと頼みます。モズは傷ついた嘴を示し、食べたくても食べられないのだと言います。彼らは静かに話し合います。モズは「スズメくん」と呼びかけ、スズメは「モズさん」と呼びます。お互いに同じ境遇にいる、一種の連帯感情が生まれています。

スズメは自分が死ぬことを受け入れられません。ついさっきまで、楽しく暮らしていたのに、自分は何も悪い事なんかしていないのに、何故、急に死ななければならないのか。スズメの感じ方は、死を遠くのものと考え、毎日をうかうか生きている人間と同じです。
一方、モズは覚悟ができているように見えます。肉食のモズは普段から小さなカエルや小鳥を食べています。他の生き物の命をとってきた自分が、今度はトビに殺される。それも仕方のないことだと考えているようです。スズメにはそれが理解できません。自分たちも虫を食べてますが、虫は「食べ物」だと思いこんでいる。極めて自分勝手なのですが、そのことに気づくことができません。

モズは母親から、ひとりぼっちになることを教えられたと語ります。みんなと群がっているようでは、餌にありつけずに飢え死にするしかない。生まれたときも、死ぬ時もひとりきりなのだから、ひとりで生きることを心がけろと習ったのです。それだから、いつも仲間と一緒にいるスズメよりも、自分の状況をより正しく把握し、あきらめがつくのでしょうか。
by 神澤和明





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Last updated  2019.06.22 09:00:12


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