ある夏の未明、突然やってきた救急車が妻を連れ去った。男は妻を探して病院に辿りつくが、彼の行動は逐一マイクによって監視されている……。二本のペニスを持つ馬人間、女秘書、溶骨症の少女、<仮面女>など奇怪な人物とのかかわりに困惑する男の姿を通じて、巨大な病院の迷路に息づく絶望的な愛と快楽の光景を描き、野心的構成で出口のない現代人の地獄を浮き彫りにする。
安部作品は年に一度は読みたくなります。タイトルが「密会」ということで、かなり怪しい小説です。
いきなり主人公の妻が救急車に連れ去られ、主人公の男は妻が連れ去られたという病院に潜入します。病院近くの奇妙な代理屋から始まり、病院内で登場してくる面々…、かなりうさんくさいです、やばいです。
日常のようで、日常でない、どこか歪んだ次元にトリップさせてくれます。一読しただけでは、内容の把握すらできません。後からじわじわ沁み込むように、この物語の良さが分かってきます。
特に発情期を持たない人間は、いつでも性的快楽を求めることができるが、過剰ともいえるセックス産業の影響か、氾濫する性に対しての安部公房からのメッセージとも取れます。
最後は刹那的を通り越した、絶望的な結末を迎えます。非常に複雑な読後感です。
しかし、昭和50年代に書かれた小説とは思えません。安部公房のシュールな世界は、完全に時代を超越しています。