海産物問屋「きママ」の細腕繁盛記

海産物問屋「きママ」の細腕繁盛記

苦しみの日々、哀しみの日々の贈りもの



哀しみの日々



それはひとを少しは深くするだろう

わずか五ミリくらいではあろうけれど



さなかには心臓も凍結

息をするのさえ難しいほどだが

なんとか通り抜けたとき 初めて気づく

あれはみずからを養うに足る時間であったと



少しずつ 少しずつ深くなってゆけば

やがては解るようになるだろう



人の痛みも 柘榴のような傷口も

わかったとてどうなるものでもないけれど

       (わからないよりはいいだろう)



苦しみに負けて

悲しみにひしがれて

とげとげのサボテンと化してしまうのは

ごめんである



受けとめるしかない

折々の小さな棘や 病でさえも

はしゃぎや 浮かれのなかには

自己省察の要素は皆無なのだから






~茨木 のり子~



© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: