心の赴くままに

心の赴くままに

PR

Profile

kishiym

kishiym

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Comments

cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2020.05.16
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 私たちは、有史以来の物々交換からはじまり、やがて中国や自国の貨幣を使用するに至り、近世・近代以降の貨幣経済を当たり前のように生きてきました。

 ですが、最近は仮想通貨の登場で現金消滅の近未来が現実味を帯びてきて、「お金」を取り巻く様相は激変しています。

 ”「お金」で読み解く日本史”(2018年5月 SBクリエイティブ社刊 島崎 晋著)を読みました。

 現代人は近代以降の貨幣経済を当たり前に生きてきましたが、最近AIの進展で銀行・金融スキームがなくなり様相が激変している「お金」についてその歴史を振り返り役割や存在意義をあらためて考えています。

 島崎晋さんは1963年東京都生まれ、立教大学文学部史学科東洋史学専攻、大学在学中に中華人民共和国山西大学への留学経験をもっています。

 大学卒業後は旅行代理店に勤務し、のち編集者として歴史雑誌の編集者を経て、歴史作家になり今日に至ります。

 現在、商品を買った支払いを電子マネーやクレジットカードで処理する人も増え、お金に対する認識を改める必要に迫られています。

 これまでのところ人類はかろうじて一線を越えるにいたっていませんが、近年の状況を見る限りでは楽観は禁物といわねばならないでしょう。

 話を日本に限ってみても、「お金」中心の経済に行き詰まり感があることは否めません。

 コインや紙幣という実体のある通貨だけでは、閉塞状況を打開することはできないと思います。

 しかし、その代案として決定的なものはいまだなく、各種カードは既存貨幣の存在を前提として成り立つもので、仮想通貨にいたっては定着するかどうかも危うい状況にあります。

 日本経済が「お金」に翻弄される時代はまだ続きそうであり、近年、仮想通貨取引所の事件が立て続けに起きました。

 また、2013年にキプロスを見舞った預金封鎖などは、完全な他人事と決め込んでいますが、それは大きな間違いです。

 キプロス危機はキプロスショックとも呼ばれ、ユーロ圏のキプロス共和国で発生した金融危機です。

 ギリシャ危機により、キプロスの銀行の融資や債券投資に大きな不良債権が発生し、経営が立ち行かなくなったことに起因します。

 欧州連合(EU)や国際通期基金(IMF)に救済を求めた際に、支援の条件としてキプロスの全預金に最大9.9%の課税を導入することを、2013年3月16日にキプロス政府とユーロ圏側が合意しました。

 キプロスで起きたのと同じことが近い将来、日本でも起こりうることを覚悟しておかねばなりません。

 預金の引き出しが停止され、引き出しが再開された時点には、その額が半分近くに減らされているような事態が、絶対起こらないとは断言できないのが昨今の現実です。

 わたしたちが、これからどのように「お金」と付き合っていくかを考えた場合、「お金」の根本を振り返ってみることで、「お金」が社会に果たす役割などを知り、これからの「お金」のあり方を考えられるのではないでしょうか。

 物々交換から貨幣経済への転換が根付くまで、どれはどの歳月を要したかは見当もつきません。

 物々交換の開始時期がわからないのですから当然ですが、西暦57年に倭の奴国の王による後漢の光武帝への朝貢時に貨幣の存在を認識していたとすれば、その時点から最初の国産貨幣が製造されるまでに約700年が経過していました。

 東アジア情勢の緊迫にともない、日本でも権力の集中が進められると、貨幣の利便性に着目する者が増え始め、和同開珎の製造にいたりました。

 古代の貨幣には金貨、銀貨、銅銭の三種がありましたが、日本で基本通貨とされたのは銅銭でした。

 いつまでも中国大陸からの輸入に頼ってはいられませんので、和同開珎をはじめ、国産貨幣の製造と普及に向けての努力が重ねられました。

 しかし、技術の未熟さから衆人を納得させられるレベルのものが造れず、958年の乾元大宝を最後に、国産通貨の製造はいったん停止されました。

 藤原氏による摂関政治の時代と、国政の運営権が上皇の手に移った院政の時代を経て、やがて、武家政権が誕生することとなりました。

 日本人のあいだに、貨幣経済が広く浸透したのは室町時代のことでした。

 それまでは全国的に流通させるには絶対量が足りなかったため、貨幣の存在が知られてからも、日常の取引で常用されるまでには、かなりの時間を必要としました。

 室町時代になって中国大陸から大量の銅銭が流れ込むにおよんで、ようやく日本全国に貨幣経済が浸透しました。

 戦国時代は、天下を取るためには兵を食わせていかねばならず、江戸時代には、天下を治めるには民を食わせていかねばならないという構図もできあがりました。

 上意下達は無条件とはいかず、そのためには食べていくのに十分な手当をしっかりと支給し続けねばならなくなりました。

 武力だけでなく経済的な裏付けがないことには、長く政権を保つことは不可能になりました。

 そういう意味で、江戸時代は「米」中心の経済から「お金」中心の経済への過渡期にあたっていました。

 民間では商人層の台頭が目覚ましく、生産よりも流通に重きを置くことが始まりました。

 生産から流通までの全体を掌握して、特定の顧客だけを相手にするのではなく、誰にでも開かれた商売をする、現在の商社や百貨店、スーパー、小売店などの前身が生まれました。

 そして迎えた明治時代には、「お金」での納税が義務付けられるにおよび、人びとはもはや完全に「お金」なしで生きていくことができなくなりました。

 明治新政府は中央集権の体制づくりはもちろん、電信の設置や銀行の設立、鉄道の開設など、あらゆる分野で西洋を手本とした近代化を図りました。

 明治以来の日本には北進論と南進論の二つがありました。

 帝国主義に遅れて参画した日本には残された場所が少なく、北進をすればロシアと、南進をすれば英仏の利害と衝突するのは目に見えていました。

 環太平洋全域を自国の市場にしようとしていたアメリカとの関係についても、同じことが言えます。

 第一次世界大戦以降、日本でもできるだけ協調外交が推進され、衝突回避の努力が重ねられました。

 ですが、ニューヨーク株式市場に端を発した世界恐慌が、ブロック経済を招くにおよび、後発の持たざる国は先発の持てる国のお裾分けに甘んじるか、戦争を覚悟の上で手荒な手段に出るしかありませんでした。

 かくして第二次世界大戦が勃発しましたが、そこにいたるまでの日本は途中で何度も大きな選択を経験していました。

 朝鮮半島の植民地化と満州の事実上の併合は北進論であり、台湾の植民地化と中国本土への進出は南進論に分類され、太平洋戦争勃発の契機となったフランス領インドシナ進駐などは南進論の延長線上にあるものでした。

 中国と全面戦争をしながら、ソ連の脅威にも備え、米英仏に戦いを挑むなど無謀もいいところでした。
 戦後日本の復興に弾みをつけたのは朝鮮戦争特需でした。

 日本が受け負った武器・弾薬以外の軍需品の製造と運搬で、国内産業に復興の兆しが見え、敗戦に打ちひしがれていた日本にとって大きな転機になりました。

 高度経済成長期を経て、日本製品の海外市場は東アジアだけではなく、欧米にも拡大しました。

 1971年に、アメリカが19世紀末以来初の赤字を体験すると政策の大転換を行い、世界経済が変動相場制へと移行すると、日本経済も荒波の上を激しく上下しました。

 西ヨーロッパ諸国が立ち直りを見せはじめると、あらゆる分野で競争が激しくなり、米ドルの価値は急速に下落しました。

 1973年の第一次オイルショックを境に日本経済も陰りが表れ、以来政府は赤字国債の発行により財政赤字の補填に努めました。

 バブル崩壊後、窮状を打開するには従来の政治家ではダメとの考えも広まっていました。

 「聖域なき構造改革」「骨太の方針」など様々なスローガンを打ち出しながら、郵政民営化に限らずあらゆる分野での規制緩和が実行されました。

 一連の規制緩和は競争社会にともなうサービスの向上や料金の値下げといったプラスの効果をもたらしましたが、その反面、一億総中流意識や終身雇用を完全に打ち砕き、格差社会を到来させることともなりました。

 金融業界を除くあらゆる業界で人員の削減をはじめリストラが実施され、失業率が他の先進国並みに上昇しました。

 正社員の採用をできるだけ抑え、派遣社員に頼る業態も一般化して、若者の貧困化が加速することにもなりました。

 これに追い打ちをかけたのが2008年のリーマンショックと、2011年の東日本大震災です。

 消費の冷え込みは日本社会全体におよび、バブル崩壊から20年以上におよぶ不景気は、「失われた20年」と呼ばれ、IT産業一人勝ちという格差の構図は、解消される見込みがありません。

 自由競争社会・資本主義の中で、便利になった反面、生き方の選択肢が著しく狭められました。

 その結果、そこで生じる格差社会にどう対処したらよいのかという点が、日本を含めた国際社会が共通して抱える問題となりました。

 国家や会社をあてにできなくなりつつある状況では、われわれは「お金」に関してはもちろん、生活に関するあらゆる点において、自己防衛に努めなければならず、その際、本書が必ずや参考になるはずです。

序 章 2000年もの間、日本人を本当に動かしたのは「お金」だ!/第1章 こうして物々交換から物品貨幣へ移った古代日本/第2章 中国と日本の「銭」が入り組んだ中世日本/第3章 貨幣制度が本格化し金銀を求めた戦国時代/第4章 独自の貨幣制度で250年間を安定させた江戸時代/第5章 「円」と「銀行」の誕生で近代国家を歩んだ日本/第6章 高度成長とバブルでマネーに狂乱した戦後日本/終 章 こうして始まった!現金消滅の近未来





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2020.05.16 11:03:16
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: