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【カーラ18】

「……あれはカーラだ……」

「王様! 私が連れ戻してまいります!」

「では私も一緒に!王様はどうぞこのままお戻りくださいませ」

二人の従者が、カーラの消えた方向に

新たな気流をつくろうと腕を伸ばしかけた。

「その必要は無い」

王は力なく言うと、宮殿に向きなおった。

「えッ! 宜しいのですか。姫様には、そろそろ

客人とのお約束の時間でございますが――」

「分かっておるわ! だが、今はあれの好きにさせるがよい。

追っても無駄じゃ……」

王の声は、最後は震えるように小さくなった。

今ならまだ、と言いかけた従者をジイドが制した。

あとに口を開くものはなく、カーラの消えた方角に、

それぞれの思いで目を向けた。

* 

王の一行が再び気流に乗った頃、

宮殿ではちょっとした騒動が起きていた。

立派な衣に身を包んだひとりの若者が、

応接室のソファーから立ち上がって

大きな声を出していた。

「それでは! 姫君は私との約束を反故にしてまで、

いったいどちらに行かれたというのです。

この私と会うより大事な用が他にあるとでも?

そんな説明では到底、納得しませんぞ!」

整った顔立ちに美しい金髪の青年である。

父王が、魔法界の次期女王のためにと選んだ、

フィアンセ、バイロン公爵。

正式なフィアンセとなったにもかかわらず

いつになっても顔を見せてくれない王女姫に業を煮やし、

みずから出向いてきたのだった。

「こちらは既に、婚礼の準備なども整いつつあるのです。

私がどれ程にその日を待ち望んでいるか、

いかほどに恋しく思っているか。

いとしい姫君にその事を伝えようと、こうして参ったというに、

この私をないがしろにするとは!」

そう言うと、飲み物を運んできた女官の背中に

手を伸ばし、ぐいと引き寄せた。

「そうであろう?」

突然間近にせまった紫色の瞳に

思わずはい、と頬を赤らめる女官。

もう一人が慌てて床に散らばったものを片付けながら、

時々羨ましそうに見上げる。

何かを期待するように目を閉じた女官を

いきなり突き放し、つぶやいた。

「そうそう勝手にばかりさせませんよ、姫君」

(つづく)

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Last updated  March 26, 2009 07:35:18 AM
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