関西の吹奏楽を聴く

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2005年07月06日
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 近畿大学の定期演奏会は第14回(78年)から昨年の44回まで一度も欠かさず生で聴いています、と言いたいところですが、残念ながら3回だけ聞けていません。ただ、その3回もレコードとCDを買って一応は聞けています。
 この31回の中で一番の名演をあげるとすれば、躊躇なく第19回の演奏をあげる。
プログラムは
       1部 交響的断章         V.ネリベル
           大坂俗謡による幻想曲  大栗裕
           スラヴァ           L.バーンスタイン
           交響詩「前奏曲」      F.リスト
       2部 祝典序曲          D.ショスタコヴィチ
           舞踊音楽四季より「秋」  A.グラズノフ

   アンコール アッピア街道の松     O.レスピーギ
           フローレンスマーチ     J.フチーク

 すごいプログラムですよね。自由曲でよく演奏されるのが5曲も入っている。ちなみに近大のこの年の自由曲は「大阪俗謡」で、全国大会金賞。ここで演奏されたのはもちろんコンクール用の短縮版です。となると、この演奏が最も優れていたと思いがちですが、そうではありませんでした。どの曲を自由曲にしていたとしても金賞間違いなし、と言ってもいいほどの密度の高い演奏会なのでした。とくに「交響的断章」の迫力は息をのむほどです。ぼくは、この曲で全国大会金賞を獲った、関西学院大学(74年)、名古屋電気高校(82年)、山崎西中学(98年)の演奏を生で聴いています。いずれも非の打ち所のない完璧な演奏でした。ところがこの近大の演奏は、これらの演奏と印象がだいぶ違いました。完璧でないというのではない、まとまっていないというのでもない。曲を聴くより先に楽器の音が聞こえるのだ。すべての楽器の音が目の前で吹いているように聞こえる。指揮者の頭の2~3m後ろにぶら下がっているノイマンのマイクロフォンと同じところで聴いてるかのようだ。ぼくが聴いているのはフェスティバルホールの2階の後ろの方の席。これだけ離れていて、木管も、ラッパも、低音楽器も平等に、分離がよくきいて聞こえる。それぞれの音が実に生き生き、伸び伸び、つやつやしていて飽きることがない。評価などする気になれないし、そんな余裕もない。出てくる音出てくる音を楽しむので精一杯なのです。それで気がついたのですが、この曲のタイトルは誤訳ではないか。ムーブメントの音楽的な意味は「楽章」です。交響曲の第1楽章が、ファーストムーブメント、だ。断章という意味は、文章の断片、という意味でしかない。音楽に文章はないから、断章というタイトルはあり得ない。「交響的楽章」とするしかなかったはずだ。それでも、あまり意味をなしていない。複数の曲があってこその楽章だから、単一の曲に敢えて楽章とするのはほとんど無意味といっていい。単一の曲が楽章であるならば、ほとんどの曲がシンフォニックムーブメントではないか。「交響的無題」と訳すのと同じことになる。故に、このタイトルの本当の意味は「交響的動き」ではないか。ムーブメントの本来の意味を作曲者は意図していたに違いない。実際この曲は動き回っている。メロディ(主旋律)を吹くパートがめまぐるしく動く。時に1拍ずつ移動する。メロディだと思っていたらいつの間にか伴奏になり、合いの手だと思っていたパートがメロディになったりする。この動きについていく(振り回される)楽しさこそこの曲の本領ではないのか。

祝典序曲も格別と言うしかない演奏です。思い込みで喋ってる恐れもあるので、ありったけの祝典の録音を持ちだして聴き比べてみました。この演奏の5年前の近畿大、関西大、淀川工業高(82年、01年)、信愛女学院高、大阪府音楽団の6種。それぞれなかなかに優れた演奏です。特に信愛女学院は同じフェスティバルホールでの演奏で、ヴォリューム感たっぷりで非常に安定した演奏です。これ以上はないだろうといえる演奏です。でもその後で、この近大を聴くと、全然違う。圧力が全然違う。本当にすべての楽器が迫ってくる、食いついてくる、吹ききってくる。会場の空気が鳴りまくっているのが実感できる。録音でですよ。パワーだけじゃない、リズム打ちをするパートは本当に軽やかで的確。この7つの録音の中で一番テンポが速いのにです。ホルンのメロディからピッコロに移って最後オーボエでしめる流れの所では、ピッコロとユニゾンで吹いているトランペットのハイトーンが本当に美しい。余裕で吹いているとしか思えない軽やかさで、音程も全然崩れない。この部分でこのハイトーンがきっちり聞こえたのはこの演奏だけなのでした。ラッパは本当に自由自在だ。そして、木管もそのラッパに全然負けていない。全部のパートが思いきり吹いているのに全然つぶし合いをしていない。全部が負けていないので本当に強い音が気持ちよく入ってくる。

この2曲以上に感動したのがリストです。ぼくは元々この「前奏曲」が好きではありませんでした。ところがこの近大の演奏を聞くや、大好きな曲になってしまいました。先ず、木管のアルペジオです。金管楽器のファンファーレのような壮大なメロディの下で必死に吹いているのですが、たいていの場合何をやっているのかよくわかんない。ところがこの近大の木管ときたら、負けてなるものかとばかりに思い切りかみついてくる。金管を食ってやる、消してやると言わんばかりだ。実際の所は金管の方がよく聞こえているのだけれど、その意気、気迫というものがありありと見える。そして決定的だったのが、最後の方の長大なスケールです。これも普通金管の陰に隠れて、か細く弱々しい線で終始しがちのフレーズです。ところがこのクラリネットは何ですか。この太さ、力強さ、流れの美しさ。金管という暗雲をつんざいて勢いよく天に舞い上がる昇り龍のようではないか。本当に素晴らしくてほれぼれするばかりです。これだけの音量であれば、オーケストラにも勝っているのではないかと思い、5種類の録音と聴き比べてみました。カラヤン=ベルリンフィル、ムーティ=フィラデルフィア、マズア=ライプチヒゲバントハウス、ショルティ=ロンドンフィル、フェレンチェク=ハンガリー国立の5種類。やはり別物という感じが先ずする。ヴァイオリンの音色は細くて鋭いし、クラリネットは太くてマイルド。音色をそのまま再現できているかと言えば、首を振るしかないけれど、音量や存在感は全然負けていない。いないどころかどのオーケストラより美しく存在感を示している。別物ではあるけど、ぼくは一番好きです。そして、こういう音楽ができれば、本当に最高だと思う。吹奏楽の理想の姿であることは、疑う余地もないのです。






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最終更新日  2005年07月26日 08時53分11秒
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